夢から逃げた私ですが、過保護なエリート弁護士に溺愛されてます
「なるほど。それなら、今すぐ百香ちゃんの後任を探す必要はない感じだな」

 頷いた店長はほっと息をついた。そうして「わかった」といって、朗らかに笑ってくれる。

「店のことを気にすることはない。ただ、実務経験を積む勤め先が決まったら教えて欲しい。後任を探さないとだからな」
「店長……ありがとうございます!」

 頭を下げて礼をいうと、奥さんが少し遠慮がちに私を呼んだ。

「百香ちゃん、差し支えなければ、なにを目指しているのか聞かせてもらえる? その、私たちで協力できることはないのかしら?」
「それは……パラリーガル、です」

 顔を上げて答えると、奥さんが首を傾げた。一般的にはまだあまり知られていない単語だったのかもしれない。
 弁護士事務所の事務員のことだと説明し、本当は弁護士になりたかったけど挫折したことや、今は弁護士を支えたいと思っていると打ち明けた。

 静かに話を聞いてくれた奥さんは穏やかに微笑んで「手伝えそうにはないわね」と、店長と顔を見合った。
< 53 / 132 >

この作品をシェア

pagetop