夢から逃げた私ですが、過保護なエリート弁護士に溺愛されてます
 奥さんの顔が不安の色に染まった。

 ここ数週間、無言電話が続いている。
 クレームの電話ならまだしも、本当にただの無言で切れる。店名を告げただけですぐ切れる時もあれば、こっちの様子を窺うような気味の悪い息遣いが聞こえてくる時もある。

 実害がある訳じゃないからと、店長は様子見を決めたんだけど……
 店長の様子を窺うと、私たちを不安にさせないように笑った。

「さて、そろそろ閉店準備だな」

 上がった店長は私の肩に手を置くと「勉強しっかりな」といった。
 不安な気持ちを誤魔化すように笑い返すと、奥さんもさあさあといって立ち上がる。私も連れだって事務室を出た。

 店頭に出て、後ろ手にドアを閉めた時だった。再び店の電話が鳴った。
 緊張が走ったけど、受話器をとった店長の表情が緩んで笑い声が聞こえた。どうやら、今度は発注先からの電話だったみたい。
 ほっと安堵しながら、私はレジ締め作業に取り掛かった。
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