夢から逃げた私ですが、過保護なエリート弁護士に溺愛されてます
 驚きに思わず口を開くと、熱い吐息とともにそれが口腔へと滑り込んだ。まるで指を絡めるように、舌先が追いかけてける。だけど、追い立てるわけではなく、待っているよというように優しく撫でていく。

 私を甘やかす口づけだった。
 溺れそうになり、縋りつくように渉さんの首に手を回すと、濡れた唇がゆっくりと離れた。

「昨夜は強がって、別になにもしないっていったけど、本当はこうしたかった」

 熱っぽい眼差しに、お腹の奥がきゅんっとなった。
 引き寄せられ、逞しい腕に力強く抱きしめられて胸へと頬を寄せた。私とは違う、だけど同じように早鐘を打つ鼓動が聞こえてきた。

「百香ちゃんを抱きしめて、キスして、不安を消すほど愛したい……今夜もうちに泊まってくれるかな?」

 遠慮がちに誘う言葉が、優しく耳に触れた。
 求められる嬉しさで声がつまった。渉さんの背中に両手を回して、声もなく頷けば、一度緩んだ腕に再び力が込められた。

 渉さんの腕の中は、どうしてこんなに居心地がいいんだろう。心臓はいつまでも早鐘を打っているのに、ちっとも嫌じゃない。

「いつまでもこうしていたいとこだが、店にも行かないといけないから急ごうか」
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