和霊
5




彼女と同棲するようになってから、気づいたことがある。彼女は猫のような人間だということに。


基本的に無口で、自分からはほとんど話しかけてこない。だから会話の始まりは、大抵の場合僕の方からだった。何か僕が言うと、それに彼女は反応を示す。笑うことがほとんどだったが、興味がないことには「ふーん」と、途端に僕を突き放した。そこで僕が黙ってしまと、何も会話は生まれず、彼女は急に立ち上がって、食器を洗ったり、洗濯物を干すのだった。


これが慣れというやつなのだろう。最初はそんな風に、自分の都合の良いように考えていた。しかし、実際はそうではなく、彼女は本当に無口なのだ。


僕が何か質問をする。例えば、「今行きたいところは?」と聞くとする。すると彼女は、長い「うーん」の後に、一言、「公園」と答える。どんな質問をしても、彼女は必ずと言っていいほど、長い「うーん」を挟んだ。それだけ真面目に答えようとしているのだと愛らしくさえ思うのだが、わかっていても、「うーん」の間は、どうしたって不安になる。何か聞いてはいけないことを聞いてしまったのだろうかと考えてしまう。でもそこを乗り越えると、答えは返ってきて、しかも球筋は変化している。


星野伸之の、スローカーブのようだと思った。



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