和霊
6
彼女との生活は、冬を越し、5月になっていた。
忘れもしない、ゴールデンウィーク明けの5月7日。僕のスマホに父親から連絡があった。
久しぶりの連絡に身構えて出ると、父は第一声、「母さんが亡くなった」と言った。病気がちで入退院を繰り返していたのもあって、多少、覚悟はできていたけれど、それでもやっぱり動揺は隠せなかった。
「喪服とか用意せんといけんかね」と僕は、今はそれどころじゃないことを言った。父にも同じことを言われた。とりあえず帰るしかない。でも、僕には帰るだけのお金がなかった。
僕は彼女に母が死んだことを話した。彼女は一切動揺せず、「そう」とだけ言った。「帰りのお金がないんだ」、「なら、私が出してあげる」、僕は彼女にお金を借り、実家へ帰った。
実家では慌ただしい数日を過ごした。僕は悲しむ暇さえなかった。2歳下の弟の奥さん(僕にとって義理の妹にあたる)は、無病息災のお守りを身に着けていた。それを見て、僕はどうして、和霊の神様に母のことをお願いしなかったのかと後悔した。もしかしたら、母の病気は良くなったかもしれない。生きられなかった今日という一日を、少しでも長く生きられたかもしれない。お願いしたって、どうせ母は死ぬことになっていた。でも、せめて一日でもあれば。とやっぱり、遺された者としては思ってしまう。母は楽に逝けたのだろうか。