夜明けが世界を染めるころ

「ユウリで大丈夫です。私はお嬢様の執事として、5日間お世話になりますので」

年齢的には自分の方が上であるが、主人であるティアナお嬢様に「さん付け」されるのは、少し不思議な感覚だった。

「わかったわ。じゃあ、ユウリ。短い間だけどよろしくね」

スミレ色と桃色のまるで夜明けのように美しい髪色。
ふんわりとした髪を二つに結い、水色のドレスに身を包んだティアナお嬢様。
色白の肌にうっすらとピンクが差した頬、そして星空のように澄んだ蒼い瞳――見惚れてしまい、思わず息を飲む。

吸い込まれそうなほど美しく、可愛らしいだけではなく、どこか凛とした強さも感じられる。

「はい、改めてよろしくお願い致します」
頭を下げながらも、胸の奥が少し高鳴るのを感じた。

その後の時間は、あっという間に過ぎていった。
マルク様とは打って変わり、ティアナお嬢様は分刻みのスケジュールで動き、とにかく勉強熱心だった。

家庭教師の方も変わり、授業は高度な内容。
ティアナお嬢様は質問をためらわず、食い入るように授業に集中している。
私も教える側として参加するが、正直ついていくのが精一杯だった。

「ユウリ、すごいね!あの問題わかるなんて」

「いえ、ティアナお嬢様の方がすごいですよ」

先ほどの授業の内容について、2人で話し合いながら廊下を歩く。

「先生も褒めてたよ!あの人、めったに褒めてくれないからすごいよ」

「いえ、そんなことは……」
そっかー、あれはあの応用を使ってね……と小声で整理しながら話を続ける。

勉強だけでなく、淑女としての礼儀作法、食事やお茶会のマナー、庭園の手入れに馬のお世話など、どれも一生懸命取り組む。
その集中力と努力に、自然と尊敬の念が湧く。

ダンスの授業では、何度か私の足を踏んでしまうこともあったが、年齢を考えれば十分すぎるほどの実力だ。

「いや、ほんとごめんなさい!足踏んで」
勢いよく謝られる。
ダンスの優雅な所作と、このお茶目な一面とのギャップに、思わず笑みが漏れる。

「大丈夫ですよ」
心の中で、少し安心する。

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