夜明けが世界を染めるころ
豪華な一室へと通される。
足を踏み入れた瞬間、空気が変わった。
柔らかな絨毯、落ち着いた照明。だが、気を緩めさせるために整えられた空間だと、本能が告げている。
私は周囲をさりげなく見渡した。
扉は一つだけか。
——この位置から下の会場の様子が見える造りになっているのか。
「そんなに警戒しなくていい」
声に振り向くと、仮面の男——いや、すでに一人の“主”としてそこにいた男が、ソファに腰掛けていた。
「扉は開けたままだ。
気分が悪くなったら、すぐ出て行ってもらって構わない」
こちらの思考を読み取ったかのような口調。
「……すみません。少し、緊張していまして」
そう答えながら、私は向かいのソファに腰を下ろす。
距離はある。だが、逃げ場があるとは思えなかった。
「当然だ」
彼は足を組み、指を組んで言った。
「この部屋に通された時点で、
君はもう“普通の客”じゃないのだから」
一拍置いて。
「さて。話を始める前に——礼儀として、だな」
仮面の男は、わずかに顎を引いた。
「まずは自己紹介をしよう。
サーフェスと呼んでくれ」
その名が、本名なのか、仮のものなのかは分からない。
だが、軽く名乗っただけで、この場の空気が引き締まった。
「サーフェス……」
私は名を繰り返し、胸の奥に刻む。
「では、次は君の番だ」
仮面の奥の視線が、静かに絡みつく。
「ここまで来た理由。
蝶の会と魔女の雫に、何を求めているのか」
柔らかな声。
だが、答え次第ですべてが決まる——そんな重みがあった。
「安心するといい」
彼は微かに笑う。
「この部屋で嘘をつく者は多い。
だが、嘘を自覚している者は、案外少ない」
テーブルに肘をつき、静かに言った。
「君は、どちらだ?」
仮面の奥からでもわなる鋭い視線が私を試すように見つめる。
足を踏み入れた瞬間、空気が変わった。
柔らかな絨毯、落ち着いた照明。だが、気を緩めさせるために整えられた空間だと、本能が告げている。
私は周囲をさりげなく見渡した。
扉は一つだけか。
——この位置から下の会場の様子が見える造りになっているのか。
「そんなに警戒しなくていい」
声に振り向くと、仮面の男——いや、すでに一人の“主”としてそこにいた男が、ソファに腰掛けていた。
「扉は開けたままだ。
気分が悪くなったら、すぐ出て行ってもらって構わない」
こちらの思考を読み取ったかのような口調。
「……すみません。少し、緊張していまして」
そう答えながら、私は向かいのソファに腰を下ろす。
距離はある。だが、逃げ場があるとは思えなかった。
「当然だ」
彼は足を組み、指を組んで言った。
「この部屋に通された時点で、
君はもう“普通の客”じゃないのだから」
一拍置いて。
「さて。話を始める前に——礼儀として、だな」
仮面の男は、わずかに顎を引いた。
「まずは自己紹介をしよう。
サーフェスと呼んでくれ」
その名が、本名なのか、仮のものなのかは分からない。
だが、軽く名乗っただけで、この場の空気が引き締まった。
「サーフェス……」
私は名を繰り返し、胸の奥に刻む。
「では、次は君の番だ」
仮面の奥の視線が、静かに絡みつく。
「ここまで来た理由。
蝶の会と魔女の雫に、何を求めているのか」
柔らかな声。
だが、答え次第ですべてが決まる——そんな重みがあった。
「安心するといい」
彼は微かに笑う。
「この部屋で嘘をつく者は多い。
だが、嘘を自覚している者は、案外少ない」
テーブルに肘をつき、静かに言った。
「君は、どちらだ?」
仮面の奥からでもわなる鋭い視線が私を試すように見つめる。