夜明けが世界を染めるころ

「孤児院でのボランティアでは、ティアナ お前の活躍のおかげで大盛況だったと聞いた。それに、殿下暗殺未遂事件でも殿下の助けになったと聞いた。
よくやった」

父から褒められ少し気恥ずかしくなる。

「ありがとうございます」

素直にお礼をいう。

「そこでお前を次期当主にするためには、優秀な婿が必要だと思ったのだ。
ただ、あのリチャードくんに決めろと言っているわけではない。
さすがにこの家のことを容易く任せられないからな。
だからお前が吟味するのだ。
ここに候補者リストがある。何名か選び、お見合いをしなさい」

父が差し出した紙には、50名ほどの名前がずらりと並んでいる。

――うそでしょ……。

「あ、あの……」

「急ぎではない。ゆっくり決めればいい。以上だ」

それ以上、話す気はないらしい。
――クソジジイめ!

心の中で悪態をつきながらも、表情はにこやかに装って、部屋を後にした。

「あーもう、あのクソジジイ!!」

「お嬢様、心の声が漏れておりますよ」

自室に戻ると、すぐにユウリに愚痴を吐く。

「信じられる!?呼ばれたら公爵家の人までいてよ!
私のこと何も知らないくせに、結婚前提とか言ってきたの!
しかもあのクソジジイは勝手に結婚相手の候補者リストを渡してきて、この中から選べだって!
あー、もう!それどころじゃないのにー!!」

「珍しくお嬢様が取り乱しておりますね。
あと、私にもその候補者リストを見せてください。
むしろ私が選びます」

「え、あ、そう?」

さっとリストを渡す。

「公爵家の方と言っていましたが、どなたですか?」

「紅輝オパール家の次男、リチャード様よ。
メガネをかけてて、少しそばかすがある」

「ふむ、リチャード様ですね。
とりあえずお見合いには私も立ち会います。私も吟味させてもらいます」

にっこり微笑むユウリ。
――笑顔が、ちょっと怖いな。

「ねー、というかさ、ユウリがいいのでは!!」

ユウリは代々由緒正しき執事を務める家庭で育ち子爵家でもある。

「おや、それは光栄ですね。まあ、難しいでしょうけど」

「そうだよね。というか、ユウリも嫌だよねー?無理言ってごめん」

ユウリを結婚相手として想像するのは、無理だ。
恋人というより、兄のような存在に近い。
きっとユウリも私のことを、手のかかる妹ぐらいにしか思っていないだろう。

「……そうでもないですけどね」

「え、何か言った?」

「いえ、何でもないですよ。
では、私が何名か選んでもよろしいですか?」

「うん。任せる。できるだけ結婚の話は引き延ばしたい」

「承知しました」

ユウリはいつも通り、落ち着いた声で微笑む。
その冷静さに、少しだけ安心する自分がいる。
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