夜明けが世界を染めるころ
自分の村の話に興味を持ってもらえて嬉しく、つい話してしまったけれど、失礼はなかっただろうか――ふと心配になる。

「そうだ。さっきの試合だけど、
素早さはあるけど太刀筋が大雑把。もう少し技の正確性を意識しないと、セナには全く相手にならないよ」

えっ!?
穏やかに微笑みながら、助言をするティアナお嬢様に驚く。
あの一瞬の間で、俺の癖や、いつもセナ副団長やロベルト先輩に言われることまで見抜かれてしまった。

「は、はい!精進します!」

頑張ろう。
直接話をして、目の前のティアナお嬢様が素敵な人だと直感した。
まずは、この人に認めてもらえるよう努力しよう。

「挨拶はできたか?」
ロベルト先輩が声をかけてくれる。

「はい!」
元気に返事をする。

「素敵なお嬢様だろ?」
ニヤリと笑うロベルト先輩。

「そうですね!」
素直に返事を返すと、その返答に満足げに頷く。

「お!セナ副団長とティアナお嬢様の手合わせだ。ちゃんと見とけよ」

「本当に手合わせするんですか?大丈夫なんですか?」
お嬢様が訓練に参加するなんて聞いたことがない。

しかし目の前のお嬢様は、やる気満々で木剣を構える姿も様になっている。
素人という感じはなく、自然と騎士団の訓練場に溶け込んでいるようだ。

「まあ、とりあえず見てなって」
ロベルト先輩の視線がセナ副団長とティアナお嬢様に向き、俺も自然とそちらに体の姿勢を向ける。
他の団員たちも2人の様子を見守っている。
誰も止めようとしないところを見ると、どうやらいつものことのようだ。

手合わせが始まる。
まずはティアナお嬢様が正面から向かっていく。

木剣と木剣がぶつかる音が、訓練場に鳴り響く。
初めはゆるやかに打ち合っていたが、徐々にお互いのスピードが上がっていく。

「す、すごい……」
思わず口から漏れてしまった。

「すごいよな。あんな華奢な身体で、激しく打ち合えるんだからな」
感心したように話すロベルト先輩。

しばらく打ち合いは続いていたが、ティアナお嬢様が押されているのがわかる。
あの激しく鋭い打ち合いを続ければ、体力も持たないだろう。
俺ですら、セナ副団長との打ち合いはこんなに長くは続かない。

そろそろ決着か――先に動いたセナ副団長。
これは回避は難しい。勝負ありかと思ったその瞬間、ティアナお嬢様が瞬く間に懐に入り込む。

「えっ!?どうなったんだ?」

顎先を狙う絶妙な剣さばき。
まさか、セナ副団長に勝つのか――と思ったのも束の間、セナ副団長は巧みに交わし、ティアナお嬢様の木剣を弾いた。

あっという間の出来事で、何が起きたのか頭が追いつかない。

「あの、あれ……どういうことですか?」
状況をうまく飲み込めず、俺は声を震わせる。

「うまいな、ティアナお嬢様。
わざとセナ副団長に技を決めさせようと誘い込み、良いところをつこうとしたんだろう。
だが、セナ副団長がそれを見事に交わした、というわけだ」
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