夜明けが世界を染めるころ
「あー、テオがお嬢様にデレデレしてる!
俺たちにはツンツンなのに!」

「というかテオ、お前すげぇな!
最年少合格だぞ! セナさんより早い!」

「……おい、テオ。
誰が俺より強くなるって?」

気づけば、騎士団員たちとセナがわらわらと集まってきていた。

騒がしくて、うるさくて、
でも――嫌じゃない。

「別に。
事実、そのつもりだし」

そう言うと、セナは片眉を上げた。

「……言うようになったな。
正式に騎士団員になったんだ。
これからは、ビシビシしごいていくから覚悟しろ」

……あ、そうだ。

言っておかないと。

俺は一歩前に出て、
改めてお嬢さまの前に立つ。

「お嬢さま」

「なに?」

きょとん、と首を傾げる。
その仕草が、相変わらず可愛い。

「俺――
お嬢さまのこと、大好きだよ」

一瞬、空気が止まった。

「俺を拾ってくれて、ありがとう」

「……ちょっ、え!?
な、なに急に……!」

珍しく、完全に慌てている。
耳まで赤い。

……やっぱり、可愛い。

「おい、テオ」

低く、地を這うような声。

「お前……やっぱり許さない。
こっち来い」

振り返ると、
セナが怖い顔で拳を鳴らしていた。

「うわ、待っ――」

俺は反射的に走り出す。

背後で、
騎士団員たちの笑い声が弾ける。

春の風は、穏やかで、優しくて、
舞い上がった桜の花びらを連れてくる。

ここでは、
俺は黒狼でも、ドブネズミでもない。


名前をもらい、
居場所をもらい、
守りたい人がいる。

ここで俺は、
【テオ】として生きていく。

それが、
俺の誓いだ。
< 183 / 508 >

この作品をシェア

pagetop