夜明けが世界を染めるころ
「テオ。初めて会ったときのこと、覚えてる?」
「……うん」
「私、あなたに言ったよね。
生きていてよかったって、幸せだって思えるようにするって」
ゆっくりと、思い出をなぞるように続ける。
「それはね……これから先も、変わらないよ」
彼の目を見つめながら、言葉を選んだ。
「私だけじゃない。
テオのことを心配して、気にかけてくれる人たちがいる。
その人たちの存在も、大切にしてほしいの」
胸の奥に願いを込める。
「そうすれば、きっと――
あなた自身が、ここにいていいんだって思えるようになるから」
「……違う」
かすれた声が、静かに震えた。
「俺は、他の誰かなんていらない。
お嬢様しか……いらない」
握られる手に、強い力がこもる。
「俺が、お嬢様のそばにいられるなら、何だってする。
邪魔なやつがいるなら……俺が全部、片づける。だから――」
その言葉を遮るように、私は彼の手を強く握り返した。
「違うよ、テオ」
視線を逸らさず、静かにはっきりと告げる。
「あなたには、陽の光が当たる穏やかな場所で、笑っていてほしい」
胸の奥から溢れる想いを、言葉にする。
「誰かを傷つけたり、自分を削ったりしなくていい。
そんな生き方をしなくても……あなたの価値は、何一つ変わらない」
「……でも、それじゃ俺、お嬢様といられない」
「たとえ、私が結婚してこの家を出ることになったとしてもね」
一度、言葉を区切る。
「あなたを連れていく努力をするよ。
私も心細いから、信頼できる人がそばにいてくれたら嬉しい」
少しだけ、微笑んで続けた。
「でも……それが叶わないことも、きっとある。
立場の問題もあるし、嫁ぐとなれば難しいかもしれない」
それでも――という想いを込める。
「だからこそ、テオ自身の居場所を、ちゃんと持ってほしいんだよ」
そっと彼の頬から手を離す。
それでも、重なったままの彼の手は、まだ微かに震えていた。
今度は、その手を導くように――
彼の胸に、そっと触れる。
「テオ……」
鼓動が、はっきりと伝わってくる。
「あなたが私を大切に思ってくれているように、
私も、あなたが大切よ」
指先に伝わる温もりが、確かだった。
「だから、笑っていてほしい。
あなたを想ってくれている人たちの気持ちも、見逃さずに受け取って……幸せになってほしいの」
ゆっくり、噛みしめるように言う。
「たとえ、そばにいられない時があっても――
私の想いは、ちゃんとあなたのここにある」
胸に当てた手に、少しだけ力を込める。
「そして私も、あなたの想いを受け取って持っていく。
だから……この先も、私と一緒に生きてくれる?」
……これで、伝わっただろうか。
さすがに、ベッドに押し倒されたままというのは落ち着かないけれど。
「……ずるいよ、お嬢様」
そう言ったテオの声は、もう震えていなかった。
気づけば、私の手を押さえていた力も、少し緩んでいる。
「あの、テオ。そろそろ――」
言い終える前に、額に触れる、あたたかな感触。
一瞬、思考が止まった。
「……大好きだよ、お嬢さま。
これから先も、よろしくね」
照れたように、けれど穏やかに微笑むテオ。
その表情を見て、胸の奥が、静かに――確かに、温かく鳴った。
「……うん」
「私、あなたに言ったよね。
生きていてよかったって、幸せだって思えるようにするって」
ゆっくりと、思い出をなぞるように続ける。
「それはね……これから先も、変わらないよ」
彼の目を見つめながら、言葉を選んだ。
「私だけじゃない。
テオのことを心配して、気にかけてくれる人たちがいる。
その人たちの存在も、大切にしてほしいの」
胸の奥に願いを込める。
「そうすれば、きっと――
あなた自身が、ここにいていいんだって思えるようになるから」
「……違う」
かすれた声が、静かに震えた。
「俺は、他の誰かなんていらない。
お嬢様しか……いらない」
握られる手に、強い力がこもる。
「俺が、お嬢様のそばにいられるなら、何だってする。
邪魔なやつがいるなら……俺が全部、片づける。だから――」
その言葉を遮るように、私は彼の手を強く握り返した。
「違うよ、テオ」
視線を逸らさず、静かにはっきりと告げる。
「あなたには、陽の光が当たる穏やかな場所で、笑っていてほしい」
胸の奥から溢れる想いを、言葉にする。
「誰かを傷つけたり、自分を削ったりしなくていい。
そんな生き方をしなくても……あなたの価値は、何一つ変わらない」
「……でも、それじゃ俺、お嬢様といられない」
「たとえ、私が結婚してこの家を出ることになったとしてもね」
一度、言葉を区切る。
「あなたを連れていく努力をするよ。
私も心細いから、信頼できる人がそばにいてくれたら嬉しい」
少しだけ、微笑んで続けた。
「でも……それが叶わないことも、きっとある。
立場の問題もあるし、嫁ぐとなれば難しいかもしれない」
それでも――という想いを込める。
「だからこそ、テオ自身の居場所を、ちゃんと持ってほしいんだよ」
そっと彼の頬から手を離す。
それでも、重なったままの彼の手は、まだ微かに震えていた。
今度は、その手を導くように――
彼の胸に、そっと触れる。
「テオ……」
鼓動が、はっきりと伝わってくる。
「あなたが私を大切に思ってくれているように、
私も、あなたが大切よ」
指先に伝わる温もりが、確かだった。
「だから、笑っていてほしい。
あなたを想ってくれている人たちの気持ちも、見逃さずに受け取って……幸せになってほしいの」
ゆっくり、噛みしめるように言う。
「たとえ、そばにいられない時があっても――
私の想いは、ちゃんとあなたのここにある」
胸に当てた手に、少しだけ力を込める。
「そして私も、あなたの想いを受け取って持っていく。
だから……この先も、私と一緒に生きてくれる?」
……これで、伝わっただろうか。
さすがに、ベッドに押し倒されたままというのは落ち着かないけれど。
「……ずるいよ、お嬢様」
そう言ったテオの声は、もう震えていなかった。
気づけば、私の手を押さえていた力も、少し緩んでいる。
「あの、テオ。そろそろ――」
言い終える前に、額に触れる、あたたかな感触。
一瞬、思考が止まった。
「……大好きだよ、お嬢さま。
これから先も、よろしくね」
照れたように、けれど穏やかに微笑むテオ。
その表情を見て、胸の奥が、静かに――確かに、温かく鳴った。