夜明けが世界を染めるころ
「……そうだと、いいけど」

まだ、心のどこかが揺らいでいる。
みんなを連れて行くということ。
その先に待つ道は、きっと平坦じゃない。

それでも――
明るい未来を見るために。
大切な人たちを守るために。

私は、立ち上がる。

その沈黙を破るように、ルイが微笑んだ。

「ねえ、ティアナちゃん」

「……なに?」

「私も、ティアナちゃんのこと、好きよ」

不意打ちの言葉に、目を見開く。

「可愛い見た目で、芯があって、いつだって前を向いて。
……本当に、強い女性よ」

からかうようで、でも真剣な声音。

「私もね、“惚れた弱み”ってやつかしら」

くすっと笑って、続ける。

「ティアナちゃんのお願いなら、嬉しいものよ」

「……え?」

「私はね、貴女に返しきれない恩があるの」

少しだけ表情を和らげて。

「今の生活があるのも、貴女のおかげ。
エマのことも……ね」

そう言って、ウィンクする。

その仕草の奥に、ふと影が差す。
遠い昔を思い出しているような目。

――騎士だった彼を、スカウトし
この店に引き寄せたのは……私だった。

過去と現在が、静かにつながる。

「だから」

ルイは、まっすぐに言った。

「今度は私が、あなたの力になる番」

胸の奥が、熱くなる。

「……ありがとう、ルイ」

その一言に、ルイは少し照れたように笑った。

「礼なんていらないわ」

そう言って、軽く肩をすくめる。

「お嬢様が進む道、
どんなに暗くても――
私は、ちゃんと隣を歩くわよ」

ブティック・グロウの奥で。
静かに、けれど確かに、
仲間がひとり、増えた瞬間だった。
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