夜明けが世界を染めるころ
騎士たちが手際よく後処理を始める。
床の血痕も、砕けた宝石の欠片も、まるで最初から存在しなかったかのように片づけられていく。

……さすが王族の現場対応だ。

メインディッシュは食べ終えたし、これ以上ここにいる理由もない。
そう思って席を立った、その時。

「おや、デザートはまだだよ。ティアナ嬢」

にっこりと微笑む殿下。

……この状況で甘い物を勧める神経、どうなってるの。

「殿下が言っていた“あの人”について教えてくださるなら、ご一緒しますけど」

半分は本音、半分は牽制。
どうせ、はぐらかすつもりだろう。

その場合は、レオに頼んでデザートを部屋まで運んでもらえばいい。
甘い物は好きだけど、無駄な付き合いは御免だ。

「いいよ」

あっさり。

「君ともう少し一緒にいたいし、別室でデザートを食べながらゆっくり話そうか」

……この人、本当にさらっと言う。

「一緒に居たい」なんて、王子が軽々しく使う言葉じゃないでしょうに。

内心ため息をつきつつも、私は肩をすくめた。

「……教えてくださるなら、付き合います」

「決まりだね」

殿下は満足そうに頷き、レイさんに視線を送る。

「静かな部屋を用意して。
あとレオのデザートも運んでくれ」

「かしこまりました」



――あの人。
宝石を操り、証拠を残さず、
貴族すら駒として使い捨てる存在。

殿下がそれを語るというのなら。

きっと、甘いデザートより
よほど苦い話になるだろう。
< 247 / 508 >

この作品をシェア

pagetop