夜明けが世界を染めるころ
「騎士団に行ってくる」

私がそう言うと、ユウリは一拍だけ置いてから頷いた。

「……わかりました」

私は立ち上がり、動きやすいシャツとズボンに着替える。
足元はブーツ。
髪はシニヨンにまとめてもらい、紺色のリボンを結んだ。
騎士団に到着すると、乾いた木剣の音が訓練場に響いていた。
赤銅色の彼が、木剣で素振りをしている。
ふわふわの髪が振りのたびに揺れ、光を受けて赤く輝く。

私の気配に気付いたのか、アレンがぱっと顔を上げ、にこりと笑った。

「お嬢様。こんにちは!」

「こんにちは、アレン。邪魔しちゃったかな?」

「いえ、大丈夫です! また手合わせお願いしてもいいですか?」

「ええ、もちろん」

軽く体をほぐして準備運動を済ませる。
そして向かい合い、互いに木剣を構える。

グッと足に力を込め、一気に踏み込む。
木剣がぶつかる乾いた音が、訓練場に響いた。

「ほら、どんどんいくよ!」

「ひぃえええ!」

スピードをどんどん上げながら攻める。
アレンは、情けない声を出しつつも、必死に食らいついてくる。
少しずつ反応が早くなってきて、手合わせとしては中々いい感じだ。

「本気出さないと怪我するよ」

アレンは、受け流すので精一杯で反撃がほとんどできない。

「もう本気ですって!」

「なら――アレン、こっちから仕掛けるね」

打ち合いを続けながら、こちらから角度を変えて仕掛ける。
木剣の衝突音が連続し、互いの息遣いだけが混じる静かな緊張感。

(……うん、やっぱり成長してる)

アレンの眼差しには、まだ少し迷いがあるけれど、確実に力がついているのがわかる。

スピードをさらに上げ、懐に飛び込む。
剣先をアレンに向けると――彼はその速さに反応し、しなやかに避けた。

「いいね」

「今度は俺がいきますよ」

アレンが勢いよく踏み込み、剣先がこちらに向かう。
だが、届く前に私は反応し、軽く彼の首筋に自分の剣先をチョンと当てた。

「アレン、だいぶいい感じ」

「そうですか……またあっさり負けましたよ」

ガクッと項垂れるアレンに、思わず笑みが漏れる。

「前より動きにキレがあるし、ちゃんと体力作りもしてるね」

視線を追うと、彼の動きからは確かに筋肉がついたことがわかる。
スピードが落ちることなく、軽やかに踏み込んでくる。

「そうなんです! 筋肉も前よりついてきましたよ」

アレンが力こぶを見せて、はにかむ。
赤銅色の髪が朝の光に揺れ、無邪気な笑顔が少しだけ頼もしく見えた。
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