夜明けが世界を染めるころ

私たち2人が返事をしたのを確認すると、レイさんは懐から1つのケースを取り出した。
金色の装飾が施され、宝石が散りばめられた六角形のケースだ。

「では、ティアナ様」

差し出されたケースを前に、私は小さなバッグからラピスラズリの宝石を取り出す。

「ティアナ・ラピスラズリ。
神のご加護の名の下に、盟約します」

静かに宣誓し、ラピスラズリをケースの中へそっと納めた。

レイさんはそれを確認すると、殿下へと視線を向ける。

「ディラン・アレキサンドライト。
神の加護の名の下に、盟約する」

殿下はそう告げ、ポケットから取り出した宝石を入れた。
深い緑色を湛えたエメラルドが、ラピスラズリの隣に収まる。

――この国では、盟約を交わす際、自身の瞳の色、もしくは名を冠する宝石を捧げる慣習がある。

レイさんは静かにケースの蓋を閉じ、鍵を回した。

かちり、と小さな音が響く。

「これで契約は完了しました。この箱が再び開く時――それは盟約が正式に成立した時となります」

ケースは淡く光を放ち、やがて何事もなかったかのように沈黙する。

この箱が開くその時まで。
偽りの婚約者として、共に歩く一年。
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