夜明けが世界を染めるころ
ティアナ side
……朝。

柔らかな光が、
カーテン越しに差し込んでくる。

「……ん……」

目を開けると、
身体の重さはだいぶ引いていた。

喉も、楽。

視界に入ったのは、
見慣れた天井。

――いっぱい、寝た。

「ふー……」

ほっと息をつく。

「おはよう」

すぐ近くから、
落ち着いた声がした。

「――っ!?」

反射的に身体を起こしかける。

「ディ、ディラン!?」

ベッドの横。

椅子に腰掛け、
肘をついたまま、
こちらを見ているディラン。

……普通にいる。

余裕の表情で。

「驚きすぎだよ」

「い、いつから……?」

「君が寝息を立て始めてから」

……それは、
ずっと、という意味では。

「……もしかして……」

昨夜のことが、
断片的に蘇る。

手を握られていた感覚。
低い声。
『朝までいる』と言われた気が――

「……まさか……」

「うん」

即答だった。

「一晩中、いたよ」

「!!」

一気に顔が熱くなる。

「ち、ちが……っ
あの、それは……!」

しどろもどろになる私を、
ディランは面白そうに眺める。

「安心して」

「何もしていない」

……言い方が、ずるい。

「ちゃんと、
君が眠るのを見守っていただけだ」

「……見守るって……」

「看病とも言うね。ただ…」

くすっと、余裕の笑み。

「口を開けてヨダレが垂れていたよ」

「っ!?」

慌てて口元を拭う。

「冗談だ」

……むかっ。

「でも」

少し声を落として、

「熱で甘えた君は、
なかなかに貴重だったよ」

「――っ!!」

完全に布団を引き上げる。

「わ、忘れてください!!」

「それは無理だな」

即答。

「~~~っ!!」

「ティアナ」

布団越しに、
優しく名前を呼ばれる。

「……なに?」

小さく返すと、
彼は少しだけ表情を和らげた。

「熱は下がっている」

「今日は、無理をしない」

「わかったね?」

……昨夜と同じ。

優しくて、
逃げ場のない声音。

「……はい」

そう答えると、
満足そうに頷いた。

「いい子だ」

……その一言で、
胸がまた、うるさくなる。

ディランは立ち上がり、
窓を少し開けた。

朝の風が、
静かに部屋へ流れ込む。

「朝食は、アリスが用意している」

「あとで皆にも顔を見せてあげて」

「心配していたからね」

「……うん」

そして、振り返る。

「ちなみに――」

少しだけ、
悪戯っぽく。

「弱っている君は、特別可愛すぎだよ。
昨日の君は 俺だけのものだ」


……何をいってるんだ、本当に。

顔が熱いのは、
もう、熱なんかじゃない。
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