夜明けが世界を染めるころ
けれど数歩進んだところで、また足元がふわりと揺れる。
「……っ」
「お嬢様」
セナがすぐに立ち止まった。
私の様子を一瞬見て、静かに判断する。
「……やはり、無理をなさらないほうがいいですね」
そう言って、彼は私の前に背を向けて膝を折った。
「おんぶします」
「え?」
「……拒否は受け付けません」
淡々とした声だが、いつもより少しだけ強かった。
「で、でも――」
「転ばれるほうが問題です」
「……」
その言い切りに、思わず苦笑する。
「じゃあ……少しだけ」
「はい」
背に乗ると、思った以上に安定していた。
剣を振る腕と同じ、迷いのない支え。
「軽いですね」
「それ、ディランにも言われた……」
「……殿下にも、ですか」
なぜか声が低くなる。
後ろでは、
「セナ副団長かっこいいです!」
「さすがだなぁ」
と、アレンとロベルトが感心している。
「静かにしろ」
「はい!」
回廊へ続く道を、セナはゆっくりと歩いていく。
歩調は一定で、揺れもほとんどない。
「……安心する。なんかいいにおい…」
思わず漏れた言葉に、セナの背がわずかに強張った。
「そう言っていただけるなら……光栄です」
そのときだった。
「――セナ」
低く、よく通る声が響く。
顔を上げると、柱の影からディランが現れた。
こちらを見て、一瞬だけ目を細める。
「やはり、外に出ていたか」
「殿下」
セナは足を止め、一礼する。
アレンとロベルトも慌てて姿勢を正した。
「お嬢様の体調が完全ではありません。
部屋へ戻る途中です」
「見れば分かる」
ディランの視線が、私の様子を静かに確かめる。
「……顔色が落ちている」
「ちょっと眠いだけ……」
そう言うと、彼は小さく息をついた。
「交代しよう」
「……殿下?」
「私が運ぶ」
即答だった。
「ですが――」
「セナを信用していないわけではない」
ディランはきっぱりと言う。
「ただ、ここから先は私の役目だ」
その声に、揺るぎがない。
セナは一瞬迷い、やがて静かに頷いた。
「……承知しました」
彼はゆっくりと私を下ろす。
足が地につくと、少しだけふらつく。
その瞬間、ディランの腕が迷いなく伸びた。
「つかまれ」
そう言って、私の前に背を向ける。
「……また?」
「今度は婚約者の権限だ」
「ずるい……」
小さくそう言いながら、私はその背に身を預けた。
セナは一歩下がり、静かに頭を下げる。
「お嬢様を、よろしくお願いいたします」
「ああ」
短い返事。
「……っ」
「お嬢様」
セナがすぐに立ち止まった。
私の様子を一瞬見て、静かに判断する。
「……やはり、無理をなさらないほうがいいですね」
そう言って、彼は私の前に背を向けて膝を折った。
「おんぶします」
「え?」
「……拒否は受け付けません」
淡々とした声だが、いつもより少しだけ強かった。
「で、でも――」
「転ばれるほうが問題です」
「……」
その言い切りに、思わず苦笑する。
「じゃあ……少しだけ」
「はい」
背に乗ると、思った以上に安定していた。
剣を振る腕と同じ、迷いのない支え。
「軽いですね」
「それ、ディランにも言われた……」
「……殿下にも、ですか」
なぜか声が低くなる。
後ろでは、
「セナ副団長かっこいいです!」
「さすがだなぁ」
と、アレンとロベルトが感心している。
「静かにしろ」
「はい!」
回廊へ続く道を、セナはゆっくりと歩いていく。
歩調は一定で、揺れもほとんどない。
「……安心する。なんかいいにおい…」
思わず漏れた言葉に、セナの背がわずかに強張った。
「そう言っていただけるなら……光栄です」
そのときだった。
「――セナ」
低く、よく通る声が響く。
顔を上げると、柱の影からディランが現れた。
こちらを見て、一瞬だけ目を細める。
「やはり、外に出ていたか」
「殿下」
セナは足を止め、一礼する。
アレンとロベルトも慌てて姿勢を正した。
「お嬢様の体調が完全ではありません。
部屋へ戻る途中です」
「見れば分かる」
ディランの視線が、私の様子を静かに確かめる。
「……顔色が落ちている」
「ちょっと眠いだけ……」
そう言うと、彼は小さく息をついた。
「交代しよう」
「……殿下?」
「私が運ぶ」
即答だった。
「ですが――」
「セナを信用していないわけではない」
ディランはきっぱりと言う。
「ただ、ここから先は私の役目だ」
その声に、揺るぎがない。
セナは一瞬迷い、やがて静かに頷いた。
「……承知しました」
彼はゆっくりと私を下ろす。
足が地につくと、少しだけふらつく。
その瞬間、ディランの腕が迷いなく伸びた。
「つかまれ」
そう言って、私の前に背を向ける。
「……また?」
「今度は婚約者の権限だ」
「ずるい……」
小さくそう言いながら、私はその背に身を預けた。
セナは一歩下がり、静かに頭を下げる。
「お嬢様を、よろしくお願いいたします」
「ああ」
短い返事。