夜明けが世界を染めるころ
「さて、少し休憩にしましょうか」
セナが他の団員たちに声をかける。

「そうだ、差し入れ持ってきたんだった!アレンくん、みんなに配ってくれる?」

近くで控えていたアレンに、私が持ってきたバスケットを手渡す。
中には、レオに頼んでおいた焼き菓子――フィナンシェが入っている。
アーモンドと焦がしバターの香りが絶品だ。

強面の騎士団員たちだが、見た目とは裏腹に甘党が多い。
甘いのが苦手な人のために、フィナンシェはプレーンのほか、紅茶味とコーヒー味も用意してもらった。

私は、もう一つのバスケットからピクニック用クロスを取り出す。

「俺がやりますよ」
セナがライトグリーンのクロスを広げ、手際よくバスケットからフィナンシェを取り出して並べてくれた。

「あ、私、飲み物を忘れちゃった」
レオが用意してくれた飲み物を置いてきてしまったのだ。

「俺が取りに行きますよ。厨房ですよね?」

「いいよ、私が急いで取りに行くから」
そうセナに声をかけ、立ち上がろうとしたそのとき、よく通る声が聞こえてきた。

「おーい、お嬢さーん、忘れ物です!」
豪快に手をブンブン振りながら、コーラルオレンジの髪を風になびかせて走ってくる。

すごい勢いで駆けてくるけど……手に持っているのは、私が忘れた飲み物だよね?中身、大丈夫かな。

「レオ、わざわざありがとう。溢れてない?平気?」
私はレオの手元に目をやる。

「多分大丈夫です!」
そう言いながら、レオはピクニックシートの上に荷物を置き、瓶の水筒とコップを取り出す。
瓶の水筒の中には、真っ赤なラズベリーとソーダ水が入っていて、シュワシュワと泡が立っている。

案の定、コップに注いだラズベリーソーダが溢れそうになり、レオは「おっとと」と言いながら、なんとか溢れる前にすする。

私、セナ、テオ、レオの分の飲み物を無事に配ってくれた。

「セナ、お邪魔するよー!」
レオがピクニックシートに座る。

「まずはお嬢様に許可を取ってくださいよ」
呆れ顔のセナに、レオは特に気にする様子もない。
彼は騎士団にいたこともあり、セナとは顔見知りなのだ。
テオも特に気にせず、私のそばに腰掛ける。


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