夜明けが世界を染めるころ
「お嬢様、そろそろ体力切れですかね。決めさせてもらいますよ」

そう言って、セナが重い一撃のために木剣を溜めた隙を逃さず、私は素早く懐に滑り込み木剣を向ける。

これで決める――顎先を狙った。
スピードを緩めたつもりはないし、怪我をさせまいと躊躇したわけでもない。
本気で一撃を入れようとし、寸止めさせる自信もあった。

それなのに、私の木剣はセナに届くことなく弾かれ、宙を描い飛んでいった。

「お嬢様、お見事ですね」

「……むっ」
一撃も入れられず、木剣を吹っ飛ばされた相手に褒め言葉を言われ、思わず睨みつける。

「さっき体力切れの振りをして俺を誘いましたね。
あのスピードで正確に顎を狙いにくるとは、中々です」

「そうだけどー」
決められると思ったのにあっさり回避され、戦略も見抜かれてしまった。
涼しげな顔のセナは汗一つかいていない。悔しい。

――いつか、焦った顔をさせてみたいものだ。

ただセナは、ラピスラズリ伯爵家 第3騎士団の副団長。
剣術の腕は王国でも随一で、王国騎士団の入団試験ではぶっちぎりの一位。
本来なら、王国騎士団としてアレキサンドライト王国で働けるほどの実力者である。
それでも本人の希望で、私の専属騎士としてここにいるのだ。
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