夜明けが世界を染めるころ
ユウリside
戦場から少し離れた施設内。
レイさんとテオが先日発見した研究施設だ。
今日はガイルがお嬢様たちを捉えようとして人手を割いているせいか、警備は普段より手薄だった。
静かに足音を殺しながら歩く。
手には小型の魔力測定器。
壁の結界、床下を流れる魔力脈、部屋ごとの反応――
一つずつ確認し、素早くメモを取っていく。
「……ここは警備が薄い。だが、補助結界が重ねられている」
低く呟き、指で間取り図をなぞる。
扉の配置、巡回ルート、魔力反応の強弱。
頭の中で瞬時に安全経路と危険域を組み立てていく。
その背後では、侍女のアリスが周囲を警戒しながら、照明具と道具を手際よく管理していた。
「ユウリ様、こちら……障壁反応が強いです」
「ええ。次の部屋に入る前に測定を済ませましょう」
言葉は少ない。
だが長く仕えてきた呼吸で、動きに迷いはなかった。
――その、時だった。
測定器の針が、微かに揺れた。
「……?」
数値に異常はない。
結界の反応でもない。
けれど、胸の奥が――ひくり、と疼いた。
(……今のは)
理由のない違和感。
魔力でも、気配でも説明できない。
それでも、執事として培った感覚が、はっきりと告げていた。
――嫌な予感だ、と。
「……お嬢様……?」
思わず、小さく名が零れる。
戦場とは距離がある。
ここに敵影もない。
それなのに、胸の奥がざわめいて収まらない。
無意識に測定器を握りしめた。
(どうか……ご無事で)
戦場で奔走する主の姿が、脳裏をよぎる。
今できることは一つだけだ。
確実に情報を集め、戻ってきたとき、少しでも安全な道を示すこと。
「……急ぎましょう、アリス」
「……はい」
2人は再び歩き出す。
闇に沈む施設の廊下で、
測定器の淡い光だけが、静かに揺れていた。
その胸騒ぎが、
ただの思い過ごしであってほしいと願いながら――。
戦場から少し離れた施設内。
レイさんとテオが先日発見した研究施設だ。
今日はガイルがお嬢様たちを捉えようとして人手を割いているせいか、警備は普段より手薄だった。
静かに足音を殺しながら歩く。
手には小型の魔力測定器。
壁の結界、床下を流れる魔力脈、部屋ごとの反応――
一つずつ確認し、素早くメモを取っていく。
「……ここは警備が薄い。だが、補助結界が重ねられている」
低く呟き、指で間取り図をなぞる。
扉の配置、巡回ルート、魔力反応の強弱。
頭の中で瞬時に安全経路と危険域を組み立てていく。
その背後では、侍女のアリスが周囲を警戒しながら、照明具と道具を手際よく管理していた。
「ユウリ様、こちら……障壁反応が強いです」
「ええ。次の部屋に入る前に測定を済ませましょう」
言葉は少ない。
だが長く仕えてきた呼吸で、動きに迷いはなかった。
――その、時だった。
測定器の針が、微かに揺れた。
「……?」
数値に異常はない。
結界の反応でもない。
けれど、胸の奥が――ひくり、と疼いた。
(……今のは)
理由のない違和感。
魔力でも、気配でも説明できない。
それでも、執事として培った感覚が、はっきりと告げていた。
――嫌な予感だ、と。
「……お嬢様……?」
思わず、小さく名が零れる。
戦場とは距離がある。
ここに敵影もない。
それなのに、胸の奥がざわめいて収まらない。
無意識に測定器を握りしめた。
(どうか……ご無事で)
戦場で奔走する主の姿が、脳裏をよぎる。
今できることは一つだけだ。
確実に情報を集め、戻ってきたとき、少しでも安全な道を示すこと。
「……急ぎましょう、アリス」
「……はい」
2人は再び歩き出す。
闇に沈む施設の廊下で、
測定器の淡い光だけが、静かに揺れていた。
その胸騒ぎが、
ただの思い過ごしであってほしいと願いながら――。