夜明けが世界を染めるころ
「殿下!」

闇の向こうから声が上がり、俺は足を止めた。
次の瞬間、火花を散らして剣を下ろすテオたちの姿が見える。

「テオ……無事か」
「はい。こっちはなんとか」

肩で息をしながらも、テオの目は鋭い。

「敵は?」

「全員、片付きました」
アレンが地面に腰を下ろしながら答える。

一瞬、胸を撫で下ろしかけ――すぐに打ち消す。

「……セナとティアナは?」

空気が張り詰めた。

「合流できてません」
テオが首を振る。
「敵が意図的に分断してきたんで……
お嬢さまとセナ副団長を、先に逃がしました」

――逃がした。

胸の奥がざわりと波打つ。

「方向は」
「東。湖の方角です」

嫌な予感が、確信へと変わる。

その瞬間だった。

胸の内を強く殴られたような感覚。
魔力が内側から大きく揺れる。

――共鳴。

さきほどより弱いが、はっきりと残る余波。

(……まだ、繋がっている)

「急ぐぞ」

剣を強く握り直す。

「全員、動けるか」

「もちろんよ」

「当然だ」
仲間たちが次々に頷く。

俺は夜の奥、湖のある方角を見据えた。

(頼む……間に合ってくれ)

胸に残る共鳴の痛みは、祈りにも似ていた。

――セナ。ティアナ。

俺は全力で、闇の中を駆け出した。
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