夜明けが世界を染めるころ
その様子を見ながら、

ユウリは呆れたように、けれど優しく笑い、

ディランは腕を組んだまま、小さく息を吐いた。

……怒っているわけではない。

むしろ。

「……本当に」

小さく、誰にも聞こえない声で呟く。

「無事でよかった」

そう言った横顔は、
誰よりも安堵した表情をしていた。

3人の腕は、なかなか離れなかった。

「……」

少し緩んだはずなのに、
気づけばまた距離が近い。

「よかった……ほんとによかった……」

「お嬢様、ちゃんと温かい……」

「夢じゃないですよね……?」

3人とも、名残惜しそうに離れようとしない。

その様子を見て――

「……こほん」

背後から、控えめながらよく通る咳払い。

一瞬で空気が変わった。

「――はっ!」

「す、すみません!」

「長くなりました!」

まるで訓練の号令でもかかったかのように、
3人が同時に一歩下がる。

ユウリは穏やかに微笑みながらも、きっちりと言った。

「お嬢様はまだ療養中です。
感動の続きは、回復してからにしてくださいね」

「……はい」

3人、しょんぼり。

レオは名残惜しそうに、両手をぶんぶん振る。

「またあとで!!」
「ちゃんとご飯食べてくださいね!!」
「ジャガイモも柔らかく煮ますから!!」

「……ありがとう」

そう返すと、レオはまた少し泣きそうな顔で目を真っ赤にしてて笑った。

その場を離れ、私は再び――

ユウリとディランに支えられながら、医務室へ向かう。

左右から伝わる体温。

歩調を合わせてくれる静かな気遣い。

背後では、まだ3人の視線を感じる。

廊下の角を曲がる直前、

振り返ると――

レオは最後まで手をぶんぶん振り続けていた。

その姿が可笑しくて、少し胸があたたかくなる。

「……みんな、心配してくれてたんだね」

ぽつりと漏らすと、

「当然です」

ユウリが穏やかに答え、

「君は、そういう人だ」

と、ディランが静かに続けた。

医務室の扉が、また見えてくる。
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