夜明けが世界を染めるころ
ユウリとディランに支えられ、医務室へと辿り着いた。

扉を開けると、薬草のやわらかな香りが鼻をくすぐる。

ベッドの上には、静かに眠るセナの姿。

私はその横顔を、そっと見下ろした。

普段は冷静で、感情をほとんど表に出さない彼が、
今はまるで別人のように穏やかな表情で呼吸している。

規則正しく上下する胸。

それだけで、胸の奥がぎゅっと締めつけられた。

(……よかった)

思わず、心の中で呟く。

――生きてる。

視線を肩へ移す。

深く裂けていたはずの傷口は、丁寧に処置され、
清潔な包帯がきれいに巻かれていた。

血の滲みもなく、呼吸も安定している。

(……これなら……大丈夫そう)

そう思えた瞬間、
張り詰めていたものが、すっと緩んだ。

けれど同時に――

――これ、私がやったんだよね。

喉の奥が、きゅっと詰まる。
助けられて本当によかった。

その背後で。

ユウリとディランは視線を交わし、
互いに小さく頷いた。

2人は何も言わず、
私の肩に添えていた手をそっと離した。

「無理をするな」

それだけ残して、踵を返す。

扉が静かに閉まり、
医務室には、私とセナの呼吸音だけが残った。

静寂の中。

私は、そっとベッド脇に腰を下ろし――
眠る彼の手に、恐る恐る指を伸ばした。
あったかい…よかった。本当に。



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