夜明けが世界を染めるころ
馬車に乗りブティック グロウという店名の前でとまる。

時間を開けてもらうよう調整してもらったので、躊躇なくお店に入る。
店内には、色とりどりの美しいドレスや小物類が並び、ペルシャ絨毯が敷かれた上品な空間だ。
人気の服飾専門店で貸切にしてもらうのは、本来なら難しいことだ。

「ティアナちゃーん、いらっしゃい!」
奥から出てきたのは、フリルたっぷりのワイシャツにダークブラウンのパンツを合わせた、色白で背の高い男性。
ミルクティー色の髪はセンター分けで整えられ、中性的ながらも凛とした雰囲気を漂わせる。
ピンク色の瞳が色っぽい。
お姐言葉を使う彼はれっきとした男性だが、美意識が高く、顔立ちは非常に整っている。

「急にごめんね、ルイ。ちょっと急ぎの用事で」

「いいのよー!ティアナちゃんには本当にお世話になってるんだからぁ。むしろここまで来てもらってごめんなさいね。本来ならこちらから伺うべきだったのに」
ルイは綺麗な手を頬に当てて、柔らかく微笑む。

「大丈夫だよ。こっちが無理を言ったんだから」

「そう?ありがとうね」

「ルイに少し聞きたいことがあって…」

私が深刻そうに切り出すと、ルイも真剣な顔つきになる。

「部屋移動しましょうか、こっちにどうぞ」

個室のある部屋に通してくれた。

「ルイ、ここ最近ちょっと変わったことない?
ある宝石を身につけた人が、別人みたいに性格が変わるって話を聞いたんだけど……」

「実はその事で私も相談があって……実は“変な人”この前お店に来たわよ」

そう言って彼女は、思い出すように視線を泳がせた。

「ローブを深く被って、顔はほとんど見えなかったけど、右頬に大きい傷跡が印象的だったわ。
その人、ずいぶん怪しげな宝石を取り出して、“この店に置いてほしい”って頼んできたの」

「それで?」

「もちろん断ったわ。来歴も分からないし、見た目からして嫌な感じがしたもの。うちで出している宝石は全部ラピスラズリ家と繋がりのある宝石店から仕入れてるからね。でもそれ以上に困った事が……」

言葉を詰まらせながら店の奥を見る。
そこにいるのはルイの妹のエマだ。
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