夜明けが世界を染めるころ
「……血が繋がっていても、分かり合えないことはあります」
私は、カップを両手で包みながら、静かに言った。
「私も……そうですから」
ディランが、わずかにこちらを見る。
「マルクとは、正直言って仲良くないし」
「義母のマリアンヌにも、嫌われています」
自嘲気味に、少しだけ笑う。
「だから、家族だからって必ず分かり合えるわけじゃないってことも」
「期待してはいけないことも……知ってる」
一拍置いて、私は顔を上げた。
「だけど」
視線をまっすぐ、ディランに向ける。
「私が、はっきり言えることがあります」
彼の指先が止まった。
「ディランは、可哀想なんかじゃない」
静かな声だったけれど、迷いはなかった。
「だって、あなたはここまで努力してきた。
誰かに押し上げられたわけでも、
生まれだけに守られてきたわけでもなくて」
言葉を選びながら、続ける。
「悩んで、傷ついて、それでも逃げずに。
自分の足で立って、ここまで来た」
小さく微笑んだ。
「……そうでしょう?」
しばらく、ディランは何も言わなかった。
やがて、深く息を吐く。
「……君にそう言われると」
声が、ほんの少し揺れた。
「不思議だな」
「胸の奥で、ずっと消えなかった言葉が……静かになる」
彼は、カップから立ち上る湯気を見つめながら言った。
「“可哀想だ”と言われ続けている気がしていた。
誰にも口にされなくても。
自分自身が、そう決めつけていたのかもしれない」
私は、そっと彼の袖をつまむ。
「だったら、今ここで上書きしよう。
私は、そうは思わないって」
ディランは小さく笑った。
「……君は、本当に容赦がないな。
人の弱いところを、優しく否定してくる」
「褒めてます?」
「もちろん」
そう言って、彼は少し照れたように目を伏せる。
私は、カップを両手で包みながら、静かに言った。
「私も……そうですから」
ディランが、わずかにこちらを見る。
「マルクとは、正直言って仲良くないし」
「義母のマリアンヌにも、嫌われています」
自嘲気味に、少しだけ笑う。
「だから、家族だからって必ず分かり合えるわけじゃないってことも」
「期待してはいけないことも……知ってる」
一拍置いて、私は顔を上げた。
「だけど」
視線をまっすぐ、ディランに向ける。
「私が、はっきり言えることがあります」
彼の指先が止まった。
「ディランは、可哀想なんかじゃない」
静かな声だったけれど、迷いはなかった。
「だって、あなたはここまで努力してきた。
誰かに押し上げられたわけでも、
生まれだけに守られてきたわけでもなくて」
言葉を選びながら、続ける。
「悩んで、傷ついて、それでも逃げずに。
自分の足で立って、ここまで来た」
小さく微笑んだ。
「……そうでしょう?」
しばらく、ディランは何も言わなかった。
やがて、深く息を吐く。
「……君にそう言われると」
声が、ほんの少し揺れた。
「不思議だな」
「胸の奥で、ずっと消えなかった言葉が……静かになる」
彼は、カップから立ち上る湯気を見つめながら言った。
「“可哀想だ”と言われ続けている気がしていた。
誰にも口にされなくても。
自分自身が、そう決めつけていたのかもしれない」
私は、そっと彼の袖をつまむ。
「だったら、今ここで上書きしよう。
私は、そうは思わないって」
ディランは小さく笑った。
「……君は、本当に容赦がないな。
人の弱いところを、優しく否定してくる」
「褒めてます?」
「もちろん」
そう言って、彼は少し照れたように目を伏せる。