夜明けが世界を染めるころ
「……ティアナ」
名前を呼ばれて、私は顔を上げた。
ディランは、少しだけ迷うように視線を伏せ、
それから意を決したようにこちらを見る。
「君は、時々……とても残酷だ」
「え?」
「俺が必死に積み上げてきた理屈や諦めを
一言で、壊してしまう」
困ったように笑う。
「“可哀想じゃない”なんて」
私は何も言えず、ただ彼を見つめた。
「誰もが、俺を“王子”として見てきた。
期待するか、恐れるか、利用するか。
そのどれかだった」
彼の指先が、そっとソファの上で私の指に触れる。
絡めることはせず、
触れているだけなのに、はっきりと温度が伝わる距離。
「でも君は…
俺が何者かじゃなくて。
どんなふうに立っているかを見てくれた」
少し照れたように、けれどまっすぐに続ける。
「……気づいたら、君の前では、
強がる必要がなくなっていた」
「弱さを隠そうとも、思わなくなっていた」
視線が合う。
「それが、どれほど救いだったか」
胸の奥に、静かな熱が灯る。
「君が倒れたとき」
声が、わずかに低くなった。
「俺は初めて、恐怖を覚えた」
「王位でも、責務でもなく」
「ただ――君を失うことが、怖かった」
言葉を選ぶように、ゆっくりと。
「守ると決めたからじゃない」
「婚約者だからでもない」
「……君が、ティアナだからだ」
一瞬、沈黙が落ちる。
夕闇の向こうで、灯りがともる音がした。
「君がここにいるだけで」
「俺は、自分が“可哀想な存在ではない”と思える」
「それは、どんな称号よりも強い」
ディランは、そっと私の手を取った。
指と指が、自然に重なる。
「……君に出会ってしまった以上」
「もう、元には戻れない」
小さく、微笑む。
「俺は、君を手放す気がない」
それは独占でも、命令でもない。
静かな覚悟だった。
「傍にいてほしい」
名前を呼ばれて、私は顔を上げた。
ディランは、少しだけ迷うように視線を伏せ、
それから意を決したようにこちらを見る。
「君は、時々……とても残酷だ」
「え?」
「俺が必死に積み上げてきた理屈や諦めを
一言で、壊してしまう」
困ったように笑う。
「“可哀想じゃない”なんて」
私は何も言えず、ただ彼を見つめた。
「誰もが、俺を“王子”として見てきた。
期待するか、恐れるか、利用するか。
そのどれかだった」
彼の指先が、そっとソファの上で私の指に触れる。
絡めることはせず、
触れているだけなのに、はっきりと温度が伝わる距離。
「でも君は…
俺が何者かじゃなくて。
どんなふうに立っているかを見てくれた」
少し照れたように、けれどまっすぐに続ける。
「……気づいたら、君の前では、
強がる必要がなくなっていた」
「弱さを隠そうとも、思わなくなっていた」
視線が合う。
「それが、どれほど救いだったか」
胸の奥に、静かな熱が灯る。
「君が倒れたとき」
声が、わずかに低くなった。
「俺は初めて、恐怖を覚えた」
「王位でも、責務でもなく」
「ただ――君を失うことが、怖かった」
言葉を選ぶように、ゆっくりと。
「守ると決めたからじゃない」
「婚約者だからでもない」
「……君が、ティアナだからだ」
一瞬、沈黙が落ちる。
夕闇の向こうで、灯りがともる音がした。
「君がここにいるだけで」
「俺は、自分が“可哀想な存在ではない”と思える」
「それは、どんな称号よりも強い」
ディランは、そっと私の手を取った。
指と指が、自然に重なる。
「……君に出会ってしまった以上」
「もう、元には戻れない」
小さく、微笑む。
「俺は、君を手放す気がない」
それは独占でも、命令でもない。
静かな覚悟だった。
「傍にいてほしい」