夜明けが世界を染めるころ
「そんなことない」

私ははっきりと言った。

「気づかなかったんじゃない。
エマが、言えなかっただけよ」

ルイは驚いたように顔を上げる。

「家族だからこそ、弱さを見せられないこともある。
それに、あなたはずっとエマを守ってきたでしょう?」

「……でも」

「もし本当に兄失格だったら、エマは今、あんなに落ち着いてない」

その言葉に、ルイの肩からふっと力が抜けた。

「……あの子、少しずつ笑うようになって、前より自分の気持ちを言えるようになったの」

「でしょう?」

私は微笑む。

「だから、これからは一緒に悩めばいい。
一人で背負わなくていいんだよ」

ルイはしばらく黙っていたが、やがて小さく笑った。

「敵わないわね、ほんと」

「褒め言葉?」

「もちろん。というか…それは貴女もよ!
何かあったら言いなさいよ。助けになるから」

ルイのその言葉に胸があたたかくなる。
ほんと心強い。

「ありがとう」


「ほんと可愛いんだから。
じゃあ私は主催者の方に挨拶して帰るからね」

「うん、またね」

「あ、そうだ!何か殿下がすごーく見ているから気をつけてね」
ウィンクして去っていくルイ。
まじか…。



「お嬢様、戻りました」

ルイと入れ替わるように、ユウリが戻ってきた。

「おかえり」

「ルイさんの姿が見えましたが、いらっしゃっていたのですね。
クラリス夫人もブティック・グロウの常連のようでしたから」

さすがユウリ。よく把握している。

「それより、どうだった?」

「はい。お嬢様の予想通りです」

「はぁぁ……早く帰りたいのに」

「まあ、さっさと処理して帰りましょう」

そう言って歩き出すユウリの後についていく。

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