夜明けが世界を染めるころ

あとは孤児院へ連絡をとって足りない設備も確認して、必要な道具の補充もしなきゃね。
やること盛りだくさんだ。


「お嬢様こちらにいらっしゃいましたか」

「あ、ユウリ。ちょうどよかった。お願いしたいことがあって」

マルクの尻拭いのため孤児院でのボランティアの件を手伝うことになったことを伝える。


「わかりました。孤児院へはすぐに連絡入れておきます」

「ありがとう」

「あと使っていない道具がないかも倉庫へ確認しておきますので…」

「さすがユウリ。できる執事がいると助かるなー」

「それは非常に有り難いお言葉ですが。」

はぁあとため息をつく、何か言いたそう。

自室に移動すると、ユウリが夕食前の紅茶を淹れてくれた。
ふわりと立ち上るジャスミンティーの香りに、自然と肩の力が抜ける。

「前から疑問だったのですが……どうして、わざわざマルク様の尻拭いをなさるのですか?
正直、痛い目を見ればいいと思いますがね」

紅茶を一口含み、その香りと味を楽しむ。――うん、美味しい。
カップをそっとテーブルに置き、足を組んでから答えた。

「マルクの尻拭いをしたいわけじゃないわ。
第2騎士団が、私たち第3騎士団に“借り”を作る状況が大事なの」

「……何か企んでいらっしゃる、ということでしょうか?」

「企んでるってほどじゃないわ。ただ、ちょっとした野望があってね。
借りは、作っておいた方が後々役に立つものよ」

ユウリは一瞬考えるように目を伏せ、それから静かに口を開いた。

「お嬢様は、本当に策士でいらっしゃいますね」

「ふふ、それは褒め言葉として受け取っておくわ」

ニヤリと微笑むと、ユウリも穏やかに笑って頷いた。

「ええ、もちろん褒めておりますよ。
私はずっと、お嬢様を尊敬しておりますから」

主人として、執事からそう言われるのは――やはり嬉しい。

「ありがとう」

「まあ……第2騎士団にとって、お嬢様は間違いなく“救世主”でしょうね」

そう言ってユウリは紅茶を注ぎ足す。
カップから立ち上る湯気の向こうで、私は小さく微笑んだ。

――借りを作るのも、味方を増やすのも、すべてはこれからのため。
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