夜明けが世界を染めるころ
そしてボランティア当日。
準備は滞りなくすませた。
「おはようございます!
朝早くから準備ありがとうございます。第2騎士団も第3騎士団も、今日は力を合わせて、みんなでボランティアを成功させましょう!」
「おおー!」
「頑張りましょう!」
力強い声が返ってくる。
第2騎士団の中には第3騎士団の協力に感謝している者は確かにいる。
だが一方で、まだ見下した態度を隠そうとしない者がいるのも事実だ。
――まあ、最初からうまくいくとは思っていない。
時間をかけて、少しずつだ。
そう心の中で整理し、厨房へ目を向ける。
大きな鍋を囲み、
人参や玉ねぎを刻む小さな手と、
それを見守りながら火加減を調整するレオ。
「はいはい、指切らないようにな」
「わかってるー!」
「レオ兄ちゃん、それ多すぎ!」
「おっと、危ないな」
楽しげな声が、厨房に弾んでいる。
一方、裏手のかまどでは――
パン屋の旦那さんのそばで、子どもたちがパン作りに励んでいた。
粉まみれになりながら、
小さな手で一生懸命、生地をこねる。
何度か練習を重ねてきた成果か、
動きは拙いながらも、ずいぶん手慣れた様子だった。
「ここはこうやって、空気を抜くんだ」
「こう?」
「そうそう、上手だ」
丸めた生地を並べる木の台には、
不格好ながらも、ひとつひとつ違う個性のパンが並んでいく。
その輪の中に――
トワの姿もあった。
小さな前掛けを身につけ、
真剣な表情で生地を両手で押している。
「トワ、そこはもっと力入れていいよ」
「……はい」
パン屋の旦那さんに教えられ、ぎゅっと力を込める。
粉がふわりと舞い、
思わずくしゃみをしそうになって、必死に耐える姿に、
「ははっ、顔まっしろ!」
「雪みたい!」
と笑い声が上がった。
トワは一瞬きょとんとしたあと、
少しだけ恥ずかしそうに笑う。
「……本当だ」
自分の手のひらを見て、
くすっと小さく笑った。
その表情は、屋敷で見るものよりも、
ずっと年相応で、無邪気だった
テオもまた、子どもたちと一緒に野菜を切っていた。
小さな丸椅子に腰掛け、
膝ほどの高さの作業台で、人参を刻んでいる。
騎士団の中では近寄りがたい印象の彼が、
子どもたちに囲まれている光景は――
どこか不思議で、少しだけ可笑しかった。
「……ずいぶん馴染んでるのね」
思わず、そう呟いてしまう。
「おにぃちゃん、切るの上手!」
隣の男の子が、目を輝かせて声を上げた。
「ほんとだー、はやい!」
無邪気な称賛に、テオは一瞬だけ手を止める。
「ん?」
それから、少し困ったように眉を下げて笑った。
「刃の扱いはねー……慣れ、かな」
軽く、どこか照れたような口調。
近くで見守っていた院長が穏やかに笑いながら近づいてきた。
「ティアナお嬢様、本当にありがとうございます。
必要な設備まで整えていただいて、さらに子どもたちにパンの作り方まで教えてくださるなんて……」
「いいんですよ。こちらも子どもたちが手伝ってくれてとても助かっていますから」
そう答えながら、再び子どもたちを見る。
パンの作り方を覚えた子どもたちは、きっと別の子へも教えるだろう。
知識が受け継がれ、経験が積み重なっていく――それは何よりの財産だ。
今日のボランティアが終わっても、設備は残る。
知識も、経験も残る。
準備は滞りなくすませた。
「おはようございます!
朝早くから準備ありがとうございます。第2騎士団も第3騎士団も、今日は力を合わせて、みんなでボランティアを成功させましょう!」
「おおー!」
「頑張りましょう!」
力強い声が返ってくる。
第2騎士団の中には第3騎士団の協力に感謝している者は確かにいる。
だが一方で、まだ見下した態度を隠そうとしない者がいるのも事実だ。
――まあ、最初からうまくいくとは思っていない。
時間をかけて、少しずつだ。
そう心の中で整理し、厨房へ目を向ける。
大きな鍋を囲み、
人参や玉ねぎを刻む小さな手と、
それを見守りながら火加減を調整するレオ。
「はいはい、指切らないようにな」
「わかってるー!」
「レオ兄ちゃん、それ多すぎ!」
「おっと、危ないな」
楽しげな声が、厨房に弾んでいる。
一方、裏手のかまどでは――
パン屋の旦那さんのそばで、子どもたちがパン作りに励んでいた。
粉まみれになりながら、
小さな手で一生懸命、生地をこねる。
何度か練習を重ねてきた成果か、
動きは拙いながらも、ずいぶん手慣れた様子だった。
「ここはこうやって、空気を抜くんだ」
「こう?」
「そうそう、上手だ」
丸めた生地を並べる木の台には、
不格好ながらも、ひとつひとつ違う個性のパンが並んでいく。
その輪の中に――
トワの姿もあった。
小さな前掛けを身につけ、
真剣な表情で生地を両手で押している。
「トワ、そこはもっと力入れていいよ」
「……はい」
パン屋の旦那さんに教えられ、ぎゅっと力を込める。
粉がふわりと舞い、
思わずくしゃみをしそうになって、必死に耐える姿に、
「ははっ、顔まっしろ!」
「雪みたい!」
と笑い声が上がった。
トワは一瞬きょとんとしたあと、
少しだけ恥ずかしそうに笑う。
「……本当だ」
自分の手のひらを見て、
くすっと小さく笑った。
その表情は、屋敷で見るものよりも、
ずっと年相応で、無邪気だった
テオもまた、子どもたちと一緒に野菜を切っていた。
小さな丸椅子に腰掛け、
膝ほどの高さの作業台で、人参を刻んでいる。
騎士団の中では近寄りがたい印象の彼が、
子どもたちに囲まれている光景は――
どこか不思議で、少しだけ可笑しかった。
「……ずいぶん馴染んでるのね」
思わず、そう呟いてしまう。
「おにぃちゃん、切るの上手!」
隣の男の子が、目を輝かせて声を上げた。
「ほんとだー、はやい!」
無邪気な称賛に、テオは一瞬だけ手を止める。
「ん?」
それから、少し困ったように眉を下げて笑った。
「刃の扱いはねー……慣れ、かな」
軽く、どこか照れたような口調。
近くで見守っていた院長が穏やかに笑いながら近づいてきた。
「ティアナお嬢様、本当にありがとうございます。
必要な設備まで整えていただいて、さらに子どもたちにパンの作り方まで教えてくださるなんて……」
「いいんですよ。こちらも子どもたちが手伝ってくれてとても助かっていますから」
そう答えながら、再び子どもたちを見る。
パンの作り方を覚えた子どもたちは、きっと別の子へも教えるだろう。
知識が受け継がれ、経験が積み重なっていく――それは何よりの財産だ。
今日のボランティアが終わっても、設備は残る。
知識も、経験も残る。