夜明けが世界を染めるころ
パンとシチューは、問題なく完成した。

午前の部と午後の部に分けて整理券を配布。そして決まった時間に取りに来てもらう制度にした。

「どうしてこのような制度にするのですか?」
そうアレンに問われ、

「同じ人が何度も取りに来ないようにするためね。とにかくたくさんの人に配りたい。
あとは、大人数が並ぶと通りの邪魔にもなるし、せっかく長い時間並んだのにもらえなかっただと悲しいでしょ」

「な、なるほど」


「あと、ひとつ疑問なんですが……」
アレンが周囲を気にしながら声を落とす。
「もしマルク様が来たら、気まずくないですか?」

何も知らされていない張本人が、ふらっと顔を出したらどうするのか、ということだろう。

「それは大丈夫よ」
私はあっさり答える。
「今日は令嬢たちと川辺でヨットを借りて、ピクニックの予定らしいから」

「……なるほど」

「それもあって、ボランティアに使う金額を抑えて、そちらに回したんだと思うわ」

その言葉に、第2騎士団員たちから一斉にため息が漏れる。

「それは……なんと言えばいいのか……」
アレンが気まずそうに視線を逸らした。

「まあ、そういうわけで」
私は軽く手を叩く。
「私たちは、私たちにできることを精一杯やりましょう」

その後、ボランティアは大きな混乱もなく、無事に進んだ。
午前・午後ともに予定数の食事を配り切り、最後の鍋も空になる。

「……もう終わりみたい。残念ね」
そう呟きながら、親子連れが名残惜しそうに立ち去ろうとする。

「うん……」
子どもも少ししょんぼりした様子だ。

「よかったら、これどうぞ」

私は小袋に入ったクッキーを差し出した。

「え、いいんですか?」
驚いたように目を丸くする。

「ありがとう!」
そう言って、親子は笑顔で帰っていった。

余った小麦粉で焼いたクッキーは、食事を配り切れなかった人たちにも手渡す。
ほんの少しのお菓子かもしれないが、それでも受け取った人たちは皆、穏やかな表情を浮かべてくれた。

――全部、配り終えた。

厨房を見渡すと、子どもたちも騎士団員たちも、どこか誇らしげな顔をしている。
疲れてはいるが、その表情は明るい。

「成功だな!」
レオがこちらをみる。

「ええ」
私は静かに頷く。
「大成功よ」

誰かの一日を、ほんの少しでも温かくできたのなら。
それだけで、今日ここに来た意味は十分にあった。

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