夜明けが世界を染めるころ
「……落ち着いて。ミヤ」
声を低く、ゆっくりと。
目を閉じ、自分の呼吸に意識を向ける。
息を吸い、吐くたびに、剣の宝石の奥にある「澄んだ感覚」を探す。
(力を出すんじゃない……
合わせる)
「蒼き想いよ、応えて――ラピスラズリ」
宝石は、いつもなら静まり返っている。
だが今、微かに――本当に微かに、温度が変わった。
次の瞬間。
ミヤのぬいぐるみの宝石が、びくりと震えた。
黒いモヤが紫の濁った光に変わり糸のように伸びる。
空間を越え、私の剣の宝石へと触れようとする。
「……っ」
反射的に、指が震えた。
(来る……!)
だが、拒まない。
押し返さない。
ただ、受け止める。
剣の宝石が、淡い白光を帯びる。
眩しさではない。
月明かりのような、静かな光。
二つの宝石が触れ合った瞬間、
空気が、音もなく揺れた。
――共鳴。
高い音でも、衝撃でもない。
心の奥で、かちりと歪みがはまる感覚。
紫の光が、波打つように乱れ、
白い光がそれに寄り添うように重なる。
「……っ、苦しい……」
ミヤの声が震える。
私は、歯を食いしばった。
(今、離したらだめ……!)
宝石同士の光が、絡まり合い、ほどけていく。
濁りは、無理やり消されるのではなく、薄く引き延ばされ、形を失っていく。
まるで、固く結ばれていた結び目を、
一本一本、丁寧にほどくように。
剣の宝石が、かすかに熱を帯びる。
初めて感じる感覚だった。
(これが……本に書いてあった……)
共鳴は、次第に安定していく。
紫は淡く、やがて透明に近い光へと変わった。
ミヤの呼吸が、ゆっくりになる。
「……あれ……?」
熊のぬいぐるみの宝石は、もう暴れていなかった。
ただ、静かに、優しく光っている。
私はようやく指を離した。
掌には、じんわりとした余熱が残っている。
――できた。
はじめての実践。
完璧ではない。
けれど、確かに、剣を抜かずに、心に触れられた。
私は小さく息を吐き、ミヤに微笑んだ。
「大丈夫。ちゃんと、戻ってきた」
ミヤの呼吸が、少しずつ落ち着いていく。
「……こわかった……」
「うん。怖かったね。
ミヤ忘れないで。貴方は一人じゃない」
ミヤを抱きしめながら
宝石は完全に静まり、ただの温かな光を残した。
声を低く、ゆっくりと。
目を閉じ、自分の呼吸に意識を向ける。
息を吸い、吐くたびに、剣の宝石の奥にある「澄んだ感覚」を探す。
(力を出すんじゃない……
合わせる)
「蒼き想いよ、応えて――ラピスラズリ」
宝石は、いつもなら静まり返っている。
だが今、微かに――本当に微かに、温度が変わった。
次の瞬間。
ミヤのぬいぐるみの宝石が、びくりと震えた。
黒いモヤが紫の濁った光に変わり糸のように伸びる。
空間を越え、私の剣の宝石へと触れようとする。
「……っ」
反射的に、指が震えた。
(来る……!)
だが、拒まない。
押し返さない。
ただ、受け止める。
剣の宝石が、淡い白光を帯びる。
眩しさではない。
月明かりのような、静かな光。
二つの宝石が触れ合った瞬間、
空気が、音もなく揺れた。
――共鳴。
高い音でも、衝撃でもない。
心の奥で、かちりと歪みがはまる感覚。
紫の光が、波打つように乱れ、
白い光がそれに寄り添うように重なる。
「……っ、苦しい……」
ミヤの声が震える。
私は、歯を食いしばった。
(今、離したらだめ……!)
宝石同士の光が、絡まり合い、ほどけていく。
濁りは、無理やり消されるのではなく、薄く引き延ばされ、形を失っていく。
まるで、固く結ばれていた結び目を、
一本一本、丁寧にほどくように。
剣の宝石が、かすかに熱を帯びる。
初めて感じる感覚だった。
(これが……本に書いてあった……)
共鳴は、次第に安定していく。
紫は淡く、やがて透明に近い光へと変わった。
ミヤの呼吸が、ゆっくりになる。
「……あれ……?」
熊のぬいぐるみの宝石は、もう暴れていなかった。
ただ、静かに、優しく光っている。
私はようやく指を離した。
掌には、じんわりとした余熱が残っている。
――できた。
はじめての実践。
完璧ではない。
けれど、確かに、剣を抜かずに、心に触れられた。
私は小さく息を吐き、ミヤに微笑んだ。
「大丈夫。ちゃんと、戻ってきた」
ミヤの呼吸が、少しずつ落ち着いていく。
「……こわかった……」
「うん。怖かったね。
ミヤ忘れないで。貴方は一人じゃない」
ミヤを抱きしめながら
宝石は完全に静まり、ただの温かな光を残した。