夜明けが世界を染めるころ
あの日の夕暮れから、俺の生活は変わった。

ブレスレットを握りしめ、ティアナの声を思い出すたびに、胸の奥が熱くなった。
――必ず、彼女の騎士になる。

それだけを支えに、俺は訓練に明け暮れた。

剣の基本。馬術。戦術。耐久力。
毎日毎日、疲れ果てるほど走り、剣を振った。
年齢のせいで最初は笑われることもあったけど、俺は諦めなかった。
「ティアナが、俺の成長を待ってる――」
その想いが、どんな苦しさも超えさせてくれた。

数年後、12歳で始めた修行は、ついに成果を見せる。

王国騎士団の試験に合格したのは、15歳歴史上最年少だった。
立派な騎士の制服に身を包むと、あの日の夕暮れを思い出す。
小さなティアナが、笑顔で「待ってる」と言ってくれたあの瞬間。

そして今日――

王宮の広間で、再びティアナと向き合った。

「……ティアナお嬢様」
目の前に立つ彼女は、あの日の面影はそのままに、
でもさらに大人びて、気品と自信が溢れていた。

長い髪が光を受けて揺れる。
立ち姿だけで、空気まで凛とする。

思わず見惚れる。
胸の奥がドキドキして、剣を握る手に力が入る。

(……でも、俺は騎士だ。感情だけじゃ動けない)

深呼吸して、背筋を伸ばす。
「ティアナお嬢様 俺――騎士になりました。
あなたの騎士として、命に代えても守ります」

ティアナは少し微笑み、でも目は真剣そのものだった。
「そう……あなたなら、できると思ってた」

その言葉に、胸が熱くなる。
そして確かに、自分の中に覚悟が生まれた。

もう泣いたり迷ったりはしない。
騎士として、セナとして、
――ティアナお嬢様を守る。

俺は小さく頷き、心の中で誓った。

(もう後戻りはできない。
ティアナお嬢様のため、王国のため、俺は前に進む――)

目の前のティアナお嬢様の視線に、恋心のようなものを感じながら、俺は剣を握り締めた。
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