夜明けが世界を染めるころ
1ヶ月後
鈴音のようにきれいな声で、ティアナが俺を呼ぶ。
「セナ……」

少し不安だ。
何だろう、この胸のざわつきは。

「実は……伯爵家の仕事が忙しくなるの。
ここの工場も落ち着いたから、しばらく会いに来れなくなる」

「そっか……」
言葉が、ほんの少し寂しく響く。

ティアナは小さな手を差し出す。
「これ、セナに」

手に取ると、淡い水色の宝石が光るブレスレットだった。
「これは……?」

「アクアマリンよ。あなたに。
勇気と希望を象徴する石」

――そう言われて、胸がぎゅっとなる。
この小さな宝石が、ティアナの想いそのものに感じられた。

「ありがとう」
俺はそっと握り、必ず大切にすると心に誓った。

ティアナの顔が、少し寂しそうに揺れる。
何か言おうとして、言葉を迷っているのが分かる。

「俺……騎士になるよ。
ティアナが俺にきっかけをくれた。
だから待ってて…は違うな。すぐに追いつく」

ちょっと照れながら、でも目は真剣に。

ニカっと笑うと、ティアナはようやく小さく笑った。
「うん……待ってる」

その瞬間、何とも言えない温かさが胸に広がる。


俺はブレスレットを握りしめ、心の中で誓った。
――ティアナの騎士になる。
どんな時も、どんな困難も、彼女のために立ち向かう。
それが彼女への恩返しだ。

そしていつか、また一緒に笑える日まで――
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