余命2ヵ月のわたしを愛した死神

目尻から零れ、頬を伝う涙を指先で拭う賢司さんは、わたしの肩を抱いた。
わたしはそんな賢司さんに肩を抱かれながら、泣き過ぎてぼんやりする頭で雨城さんに肩を抱かれた時の温もりを思い出していた。

「雫ちゃん···、大丈夫?って、大丈夫なわけ無いわよね······」

わたしにそう声を掛けてくれる賢司さんは、わたしにどんな言葉を掛ければ良いのか困惑している様子だった。

「でもね、雫ちゃん···、こんな事を雫ちゃんに言うのは残酷かもしれないけど、慧仁くんの気持ちも、分かってあげて欲しい···。だって、自分の手で愛する人の命を奪う事なんて···、出来るわけないもの。いくらそれが、仕事だとしても···。あたしがもし、慧仁くんのような立場だったら···、純ちゃんの命を奪うくらいなら、自分が犠牲になる···、そう思ってしまうと思う······」

賢司さんの言う事は、よく分かる。
わたしも、もし雨城さんの立場だったら、雨城さんと同じ選択をすると思う。

でも、分かっていても頭が追い付かない。
雨城さんがこの世から消えてしまった事実を認めたくない···――――

わたしは止め処なく溢れ出す涙を何度も拭いながら、涙は枯れる事を知らないのだと思い知らされた。

「もう···、雨城さんには、会えないって事、ですよね······」

わたしがそう呟くと、賢司さんは少し黙り込んだ後、静かに「それは分からないわ。」と言った。

「慧仁くんは、掟を破った死神を見た事が無いって言ってた。だから、自分でもどうなるのか分からなかったんじゃないかしら。結果的に、自分の寿命を雫ちゃんに託して、自分は存在しない事になってしまったみたいだけど······」

――――存在しない事になってしまった···

賢司さんの言葉を聞き、わたしは(だからだったんだ······)と納得してしまった。

それは先程、わたしがスマートフォンを開いた時に雨城さんの連絡先が何故か消えてしまった事を思い出したからだった。

「···あっ、って事は···――――」

わたしはそう呟き、慌ててスマートフォンを手に取り、写真フォルダを開いた。

昨日、わたしの姿を遺しておこうと思い、その時の思い付きで雨城さんと撮った二人の写真。
そこに写し出されていたのは、わたし一人でカメラに向かいピースをする画像だった。

(雨城さんが、消えてる······)

雨城さんが居たはずの場所には、誰も写っていない。
しかし、何故か分からないが雨城さんが写っていたはずの場所には、白い光が差し込んでいるように写っていた。

まるで、雨城さん自身が光の道へと自分から飛び込んでいったかのように···――――

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