余命2ヵ月のわたしを愛した死神
――――あれから、5年の月日が流れた。
わたしはあの頃の雨城さんと同じ年齢を迎えようとしていた。
そんなわたしは相変わらず、雨城さんと過ごしたマンションで暮らしている。
家具も、その配置もあの頃のまま、何も変えていない。
それから仕事も辞めず、"BLENDA"で働き続けていた。
あの頃は新入社員だったわたしだが、今ではチームリーダーを任せてもらえるまでに成長し、数多くの取引先の担当を抱えながら、毎日忙しく業務をこなしている。
そして、あの頃からよくお世話になっていた篠原さんは、チームリーダーから主任に昇進しており、今でも仲良くさせて頂いていた。
5年前、雨城さんが消えてしまった後に出社して気付かされた事なのだが、総務課長だった雨城さんが存在しなくなり、何故か総務課長の枠が空いていた。
そして、急遽他支店からやって来たのが、新総務課長の川島(かわしま)課長だ。
川島(かわしま)課長は39歳の男性で、社内の女性社員たちからは"爽やかイケメン"と呼ばれている。
そんな川島課長に気に入られようと、お得意の露出度の高い服装に猫撫で声で擦り寄っているのは、相変わらずの畑山さんだ。
畑山さんはまるで雨城さんの存在を全く知らなかったように、川島課長を誘い続けている。
みんなの記憶から雨城さんは消えてしまっている為、そうなってしまうのは仕方のない事なのだが···――――
それから、わたしの生活で一番変わったことがある。
それは···――――
「あっ、芽吹さん!もう5時になるよ!そろそろ保育園のお迎え時間じゃない?」
わたしにそう声を掛けてくれたのは、篠原さんだ。
篠原さんはあの頃から変わらず、わたしの事を気に掛けてくれている。
「あっ!本当だ!」
わたしは時刻を確認し、慌てて帰る支度を始める。
本来であれば18時が定時なのだが、時短申請を出し、17時までに変更してもらったのだ。
「俺が代わりに美雨(みう)ちゃんのお迎え行ってもいいんだけどなぁ〜!パパだよーって!」
「"パパ"は困りますね〜。」
「んー、ダメかぁ〜。」
そんな冗談を交わしながら、わたしは帰る支度を済ませると、「それじゃあ、お先に失礼します!」と会釈して、いち早く退社させてもらった。