余命2ヵ月のわたしを愛した死神

その後、時刻が22時を回っていた事もあり、わたしは先に休ませてもらう事にした。

「それじゃあ、明日は8時半には出発しますので。」
「分かりました。」
「では、おやすみなさい。」
「おやすみなさい。」

そんな会話を交わし、わたしはアップライトピアノがある部屋へと入り、ドアを閉めた。

一人の時間になり、ふっと身体の力が抜けていくのを感じた。
わたしはスタンドライトの電気を点けると、天井の照明の電気を落とし、ソファーベッドに腰を下ろすと、目の前にあるアップライトピアノを眺めた。

この部屋に居るだけで、先程雨城さんに弾いてもらった"最後の雨"を思い出す。

(また、弾いてもらえるかなぁ。)

そんな事を考えながら、わたしは布団に入り、ソファーベッドに横になった。
すると、一気に眠気がわたしを襲う。

普段は、場所が変わるとなかなか寝付けないわたしだが、不思議と雨城さんの家では眠りに就けそうな気がした。

そんな眠気と闘いながらウトウトした中で思い浮かべるのは、"SEVENS BAL"で初めて聴き入った雨城さんがグランドピアノを弾く姿だった。

本当に素敵だった。美しいとさえ思った。

(これは、夢じゃないよね?)

そう感じてしまう程、わたしにはあまりにもたくさんの出来事が一気に押し寄せ、印象深い一日だった。

そうしている内に、わたしは自然と瞳を閉じ、いつ眠りに落ちたのか自分でも知らぬ間に夢の中へと誘われていた。

わたしは夢をみた。
しかしどんな夢だったのかまでは、よく覚えていない。

ただ感じたのは、優しさと温かさだった。

それからもう一つ、目を覚ました時、わたしは現実で涙を流していた。
わたしは涙を流しながら、眠っていたのだった。

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