余命2ヵ月のわたしを愛した死神
「ありがとうございます。」
そう言って入社証を受け取る雨城さんは、こちらを振り向くと「これ、首から掛けておいてくださいね。」と言って、わたしの首にその入社証を掛けてくれた。
その雨城さんの行動に微かにわたしの胸が高鳴る音を立てる。
そんなわたしの気持ちを知る由もない雨城さんは、狙っている様子も無く自然な形でその後も丁寧にわたしを社内へ案内してくれた。
「今、募集してるのが、営業と販促なんですけど、雫さんはどちらを希望されますか?」
「営業事務と販促···、ちなみに業務内容を訊いてもいいですか?」
そう話しながら、わたしは雨城さんに案内され、営業部と販促部があるという5階フロアの廊下を歩く。
廊下を含めたフロア全体には、タイルカーペットが敷き詰められており、とても歩きやすかった。
「営業は基本的には、取引先に出向いたり、新規の顧客に向けて販売提案をするのが主な業務となりますね。販売促進は、POP制作や取引先の営業担当者と打ち合わせをして、店舗の客層などに合わせた棚割りを考えたり、キャンペーンの提案をしたりします。」
雨城さんの説明を聞き、わたしはすぐに「販売促進をやってみたいです。」と答えた。
すると雨城さんは、「雫さんなら、そう言うと思いました。」と言うと、歩く廊下のすぐ右側にあった部署へと足を向けた。
「ここが、販売促進部ですよ。」
そう言って、雨城さんが手を差した方向には、お洒落なナチュラルウッドの棚で囲われたオフィスが広がっていた。
所々に観葉植物が飾られ、白を基調としたデスクが対面に置かれて並んでおり、目視出来る限りでは20人から30人程の社員の人たちがパソコンに向き合ったり、テーブルを囲んで打ち合わせをしたりしている姿が見えた。
「どうぞ、ゆっくり見学して行ってください。」
雨城さんはそう言うと、販売促進部の中へと入って行き、わたしが見学しやすいように部署内をゆっくりと見て回らせてくれた。
パソコンに向き合いPOPをデザインしている人もいれば、数人でテーブルを囲み、資料を広げながら、これから行なうキャンペーンについて話し合っている人たちもいる。
わたしはその光景に興味津々で、活力を感じるそのオフィスの光景にワクワクしてくる自分を感じた。
「どうですか?」
「皆さん忙しそうですけど、何だか楽しそうに働かれていますね。何だかわたしまでワクワクしてきちゃいました。」
わたしが手のひらを胸に当てながらそう言うと、雨城さんは穏やかな表情を浮かべ、「そう感じていただけたなら良かった。じゃあ、販促で決まりですかね?」と、まるで即時採用して頂けたような口振りで言っていた。