余命2ヵ月のわたしを愛した死神

昔の扉のような古風感じるドアを開けてみると、その中はレトロな雰囲気の店内が広がっていた。
それほど広くはない店内には先客が5名程おり、知る人ぞ知る"カフェ"というか"喫茶店"という言葉が似合うお店だ。

しかし、古さを感じるだけではなく、店内の照明がかなりお洒落でそこに強いこだわりを感じた。

「いらっしゃいませ。」

カウンター内にいる店主らしき男性が言う。
華奢な丸い眼鏡を掛け、口髭を生やしたその男性は「おぉ、雨城さんかい。今日は別嬪さんを連れてるんだね。」と言いながら、穏やかに微笑んだ。

「駿(はやお)さん、こんにちは。」

雨城さんは店主らしき男性をそう呼び、挨拶をすると、"駿さん"は「いつもの場所空いてるよ。」と言った。
そのまま一番奥の二人席に向かう雨城さんは、その席が雨城さんの"いつも場所"のようだ。

(雨城さんって、顔広いなぁ······)

そう思いながら、わたしは雨城さんと共に一番奥の席につく。

微かにブラウンの色が付くグラスに二人分のお冷を入れ持って来てくれた"駿さん"は「今日はどうするんだい?」と訊いた。

「僕はいつものをお願いします。雫さんは、どうしますか?」

そう言ってメニュー表を手に取ろうとする雨城さんに、わたしは「雨城さんはいつも何を頼んでるんですか?」と訊く。
すると雨城さんは、「僕は、ナポリタンとブラック珈琲です。ここはナポリタンだけじゃなく、珈琲も美味しいんですよ。」と言った。

「あっ、じゃあ···、わたしも同じものをお願いします。」

わたしがそう言うと、"駿さん"が「はいよ。」と返事をする。
その時、雨城さんは「駿さん、雫さんの珈琲はカフェラテでお願い出来ますか?」と言った。

「お嬢さんは、ナポリタンとカフェラテだね。」

"駿さん"は優しい笑みを浮かべながらそう言うと、カウンターの方へ戻って行った。

(わたしがカフェラテの方がいいって、もう覚えてくれたんだ。雨城さんって、本当に気が利くというか何というか、紳士的だよなぁ。)

そんな事を思いながら、わたしは「ありがとうございます。」と雨城さんに会釈した。

「いえ。とりあえず、契約書も書き終えましたし、一息つきましょう。出社は、いつからにしましょうか。」

雨城さんはそう言うと、お冷に手を伸ばした。

「明後日からでも良いですか?明日は一度自宅に帰って、必要な物を取りに行きたくて。」

わたしがそう言うと、雨城さんは「構いませんよ。」と言い、お冷を口に含んでいた。
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