余命2ヵ月のわたしを愛した死神

その後、雨城さんと少し今後の話をしながら、"駿さん"が作ってくれたナポリタンを戴いた。

"駿さん"のナポリタンは、雨城さんがオススメしてくださっただけあり、今まで食べたナポリタンの中でもトップクラスに絶品だった。
ケチャップの酸味が気にならず、まろやかな仕上がりになっており、少しピリ辛で食が進むような味付けになっていたのだ。

食後は挽きたてのカフェラテを戴き、一息つく。
お腹も心も満たされ、わたしは自然と幸せな溜め息を零していた。

「とっても美味しかったです。今まで食べたナポリタンの中で一番かも。」

わたしがそう言うと、雨城さんは「僕も駿さんのナポリタンに勝てるナポリタンに、他に出会った事がないんですよね。」と言い、ブラック珈琲で一息ついていた。

それから休憩時間が終わりに近付いたタイミングでお店を出る際、お会計は全て雨城さんが出してくれた。
わたしは自分で出そうと思っていて、その上、雨城さんにお世話になりっぱなしだった為、雨城さんの分も支払おうと思っていたくらいだ。

しかし、雨城さんはわたしが財布を出す前にクレジットで支払いを済ませてしまっていた。

「雨城さんにはお世話になりっぱなしなので、ランチくらいはわたしが、と思っていたんですけど、結局ご馳走になってしまって···すいません。」

"茶葉の森"を出て会社に戻る途中、わたしはそう言った。

「いえ、気にならさらないでください。」
「気にしますよ···、本当に雨城さんに迷惑ばかりかけてしまってるので。」
「僕は迷惑だなんて微塵も思っていませんよ。だから、本当に。雫さんは、ご自分の生活を立て直す事だけに集中してください。」

穏やかな口調でそう言う雨城さんは、わたしには神様にしか見えなかった。

(色んな事があり過ぎて、神様はいないなんて思ったけど···ここに居たんだ。)

わたしは、本気でそう思った。

そして一度、雨城さんと会社に戻ったわたしは、明後日の初出社についての話をしてから、少し早めに帰宅させてもらう事にした。

その際に雨城さんは、わたしに自宅のカードキーを差し出してくれた。

「まだ少しの間はうちで過ごすと思うので、カードキーのスペア、雫さんに渡しておきますね。」

雨城さんの自宅のカードキー···――――

わたしは人の家のカードキーを預かってしまう緊張感に躊躇しながらも、雨城さんが差し出すカードキーを受け取った。

「···いいんですか?」
「カードキーがないと自由に出入り出来ないじゃないですか。どうぞ、使ってください。」

そうしてわたしは、まだ仕事がある雨城さんに会社一階の出入り口まで送って頂き、先に帰宅する事にしたのだった。
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