余命2ヵ月のわたしを愛した死神
わたしはバッグの中から鍵を取り出すと、差込口に鍵を差し込み、解錠させた。
そして拒む手のひらを恐る恐るドアノブに近付け、勢いのままにドアノブに手を掛けて扉を引く。
無意識に室内に耳を傾けていたが、中から物音がする様子はなかった。
(良かった。まだ帰って来てないみたい。)
そう思うと、わたしは家の中へと入った。
玄関を見ると、あの日に見たビジューのついた綺羅びやかなハイヒールを思い出してしまう為、わたしは足早に玄関を通り過ぎて中へと足を進めた。
その先には10畳のリビングがあるのだが、わたしはそのリビングの状態を見て唖然とした。
食べたカップ麺やお弁当の殻はそのままで、空のペットボトルも床に転がり放題。
服も脱ぎ散らかされており、家はゴミ屋敷になりかけていたのだ。
「うわぁ······」
弘太郎は、家事をするような人ではなかった為、ある程度予想は出来ていたのだが、その状態は想像以上に酷かった。
わたしはとりあえず廊下のクローゼットを開けると、中から家にある中で一番大きなキャリーケースを取り出し、最低限必要な物を詰め込んでいった。
持ち出す物のほとんどは洋服ばかりで、他には貴重品くらいだ。
さすがに家具や家電を持ち出す事は出来ない為、それは諦めて引っ越してから買い直す事にした。
最低限の物をキャリーケースに詰め込んだわたしは足早に元自宅を出ようとしたのだが、その前にわたしはテーブルの上にチラシの裏に書いた『さようなら』を残して、玄関を出て鍵を締めた後、その鍵をポストの中へと落とした。
これで、弘太郎ともこの家ともおさらばだ。