余命2ヵ月のわたしを愛した死神
***


"BLENDA"へ初出社当日の朝。
わたしは雨城さんが運転する車に乗っていた。

「そういえば、賢司さんが雫さんの就職祝いをしようって言ってましたよ。」

信号待ちで車が停止しているタイミングで雨城さんが言った。

「えっ、本当ですか?」
「はい。お店の閉店後にお祝いすると言ってました。今日は早めに21時で閉めるみたいなので、その時間くらいに行きましょう。3人でお祝いです。」

そう言うと、雨城さんは微かに微笑みを浮かべ、青信号で車を発進させた。

雨城さんはいつの間にか賢司さんにわたしの就職が決まった事を伝えてくれていたようだ。
あれから、わたしは"SEVENS BAL"には顔を出していない。

しかしそういえば、賢司さんは雨城さんのお隣さんだと言っていた事を思い出した。
お世話になっておきながら、賢司さんに報告し忘れていた自分に反省する。

(今日賢司さんに会ったら、ちゃんとお礼を言わなきゃ。)

そう思いながら、わたしは「ありがとうございます。賢司さんにもお礼を言わなきゃですね。」と言い、膝の上に置くバッグを握り締める手に力を込めた

"BLENDA"本社の駐車場に着くと、雨城さんは車の中でわたしに社員証を手渡してくれた。
そこには『販促課 芽吹』と書かれており、それを見たわたしは"BLENDA"に入社した事をじんわりと実感していった。

"BLENDA"の社員の人たちは、交通機関での通勤がほとんどらしく、雨城さんのように車通勤の人は珍しいようだ。
その為、"BLENDA"本社の専用駐車場には、それほど車が停まっていなかった。

「それでは、行きましょうか。」
「はい。」

そしてわたしは、雨城さんから受け取った社員証を首から下げると、雨城さんと共に車から降りた。
そこから、駐車場のすぐ横に堂々と聳え立つ"BLENDA"本社ビルをわたしは見上げる。

(今日から、ここで頑張ろう。)

そう意気込んだわたしは、歩き出す雨城さんに続き、"BLENDA"本社ビルの中へと向かって歩き出した。
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