余命2ヵ月のわたしを愛した死神
(えっ······)
賢司さんの言葉に、わたしの身体が硬直する。
(今、何て······?)
すると、今度は雨城さんの声が聞こえてきた。
「僕も何とかならないかと、色々考えてみてはいるんですが···」
二人の会話の意味が分からず、わたしはただその場で混乱しているしかなかった。
――――余命が2ヵ月
――――何とかならないか、色々考えてる
雨城さんと賢司さんは、どうしてわたしの余命が2ヵ月だと思ったのだろう。
「それって、絶対なの?」
「はい、掟なので。」
「その掟を破ると、どうなるの?」
「それは、僕にも分かりません。失敗をして、クビなった死神は知っていますが、掟を破った者は僕が知る限りでは居ないので。」
雨城さんの言葉に、わたしの混乱が増していく。
(死神···?何の話をしてるの?)
「失敗でクビなら、掟を破ったら、どうなるのかしら······」
困り果てたような賢司さんの声色。
わたしは雨城さんの賢司さんの話の内容に全くついて行けず、ただ立ち尽くしている事しか出来なかった。
しかし、もしかしたら「雫ちゃん」と聞こえたのは、聞き間違いかもしれない。
「死神」と聞こえたのも、何かの間違いかもしれない。
ノンアルコールを飲んでいるつもりだったが、もしかしたらノンアルコールは雨城さんだけで、わたしは普通のシャンパンだったのかもしれない。
(そうだよ、わたし、きっと酔ってるんだ。そうに違いない。)
わたしは自分にそう言い聞かせると、意を決して雨城さんと賢司さんの元へ戻る事にした。
化粧室の扉を開け歩き出すと、カウンター席が見えて、雨城さんと賢司さんの視線がわたしに向けられた。
しかし、わたしは何も聞いていなかったフリをした。
「戻りましたぁ〜」
そう言ってわたしが戻ると、賢司さんは何事も無かったかのように「あら、おかえり。綺麗に直してきたわね。」と言い、笑顔で迎えてくれた。
しかし、そんな賢司さんの表情はどこか無理に笑顔を作っているように感じ、わたしの気になる気持ちが消え去る事はなかった。
「さて、もう一本シャンパン開けちゃいましょう!」
そう言うと、賢司さんはまるで何かを誤魔化すかのように新しいシャンパンを取りにカウンター裏へと姿を消して行ったのだった。