余命2ヵ月のわたしを愛した死神
その後もわたしは何も聞いていなかったように雨城さんと賢司さんに普通に接していた。
しかし、「余命2ヵ月」と「死神」の言葉は、わたしの中にチラつき続けていた。
あの会話は何だったのか···――――
いくら考えても、わたしの中で答えが出る筈もなかったのだ。
そして、帰宅したのはもうすぐ日付が変わる頃。
自宅に着くと、雨城さんは「美味しかったですね。」と言いながら、わたしに微笑みかけた。
「そうですね、美味しかったですね。」
無難なごく普通の返答しか出来ないわたしは、出来るだけ普通に返事をした。
そして、自然な流れでソファーに腰を下ろす雨城さんとわたしだったが、そこで雨城さんはわたしの異変に気付いたかのように「雫さん、どうしたんですか?」と尋ねてきた。
「えっ?」
「何というか、どこか上の空な感じがして。」
雨城さんの言葉にドクンと胸の奥が苦しくなる。
本当に雨城さんは少しの違いにも察する能力があると思った。
「···何でも無いですよ。少し眠たくなってきたせいかな?」
そう言って、わたしは笑って誤魔化した。
しかし、そんな嘘に誤魔化される雨城さんではなかった。
「もしかして···、聞いてましたか?」
「えっ?」
「そのぉ···、賢司さんと、僕の会話を······」
雨城さんの問いに、視線を落とすわたしは、雨城さんを直視する事が出来なくなってしまった。
(何て答えればいいんだろ······)
わたしは返答に困った。
素直に言っていいのか、聞いていなかったフリを続けた方が良いのか···――――
しかし、このまま何も知らずに普通に過ごしていける自信が無かったわたしは、そっと雨城さんの方に視線を戻すと「聞くつもりは無かったんですけど···」と言葉を濁した。
すると雨城さんは「そうでしたか···」と言い、複雑な表情を浮かべた後、「申し訳ありません。」と言い、瞳を固く閉じた。
「···あの、でも···、あまり意味がよく分かっていなくて。」
「どのあたりから聞いていましたか?」
「賢司さんが"余命2ヵ月"と言ったあたりです。」
わたしがそう答えると「そうですか···」と言い、雨城さんは何と説明しようか迷っているように見えた。
「あの、あれは誰の話だったんですか?わたしの話、ですか···?」
ストレートにそう問うわたしに、目を合わせずらそうにする雨城さんだったが、こちらを向くと「雫さんは、どんな話でも···聞きたいですか?」と言った。
わたしはその雨城さんの言葉に、ゆっくりと深く頷いた。