余命2ヵ月のわたしを愛した死神
「···実は、雫さんの余命は、あと約2ヵ月なんです。」
雨城さんの言葉に(やっぱり、わたしだったんだ···)とわたしは肩を落とした。
(あと、2ヵ月って···、わたし30歳を迎える前に、死ぬって事?)
わたしはそう思いながら、「あと2ヵ月···、でも、どうしてそう思ったんですか?雨城さんが、元お医者さんとか?」と雨城さんに尋ねた。
しかし、雨城さんは「いえ。」と否定した上で「···ここから話す事は、雫さんを少し戸惑わせてしまうかもしれません。信じるかどうかは、雫さん次第です。」と言い、わたしは「分かりました。」と自分を落ち着かせながら答えた。
「なぜ、そう思ったかについてですが···、それは、僕が···死神だからです。」
真剣な眼差しで、非現実な事を口にする雨城さんは、少しも冗談めいてなどいなくて、その事にわたしは困惑した。
少しでも雨城さんがふざけている様子でもあれば、「何言ってるんですか!」と笑い飛ばせたのに···――――
そんな事が出来るような雰囲気ではなかったのだ。
「僕は、こう見えて人間ではありません。いや、人間ではあるのですが、正確には人間の肉体を借りた死神なんです。」
(雨城さんが···死神?死神って、骸骨のような容姿に鎌を持ってるのが、死神なんじゃないの?)
わたしはそう困惑しながら、「雨城さんが、死神···?」と呟いた。
「はい。死神は、天からの指令により、寿命がきた人間を死界へ導くのが役割となります。人間の寿命が尽きる約2ヵ月前に指令がくるんですが、それが今回···雫さんへの指令が届いたんです。」
あまりにも現実離れした内容に、わたしは何と反応すれば良いのか分からなかった。
そんな話はテレビでしか聞いた事が無かったからだ。
それがこんな身近に、そして自分の身に降りかかるだなんて、思いもしなかった。
「えっと···、雨城さんが死神で、天からわたしの寿命があと2ヵ月だと、知らせがきたって、事ですか?」
恐る恐るわたしがそう訊くと、雨城さんは静かに頷き「はい。」と返事をした。
「ってことは、雨城さんに指令がきたという事は···、わたしは、雨城さんに···、えっと、言い方が悪いですけど、殺されるという···事ですか?」
わたしがそう訊くと、雨城さんは視線を落とし、何も言わずにただ頷くだけだった。
その瞬間、何だか何もかもが馬鹿馬鹿しくなってきてしまった。
前の会社に酷い扱いをされ、元恋人には裏切られ···――――
生活を立て直そうと、新しい仕事も見つけて、家も決めて、これからまた新しい自分の人生を進んでいこうとしてる時だというのに···―――余命2ヵ月?
しかも、助けてくれたと思って感謝していた雨城さんに、殺される?
やっぱり神様なんて、いなかったのかもしれない。
わたしは、そう思った。