余命2ヵ月のわたしを愛した死神

その後もわたしは雨城さんに質問攻めをし続けた。

死神は大人の姿だけではなく、子どもの姿をした死神も居る事。
天から死神に指令が届く日は、雨が降る事。
人間の寿命は、生まれてくる前から決まっており、いつ何処でどんな風にと詳細に決めれている事。

指令通りに任務が遂行出来なかった死神には、罰則が与えられる事。

雨城さんは、わたしが納得いくまでどんな質問にも答えてくれた。

それにより、わたしは自分の定められた運命を受け入れられるような気持ちになってきていた。
まだ実感は湧かないし、信じきれていない部分もあるが、雨城さんが嘘をつくような人だとは思えない。

その事だけが、わたし自身を受け入れる心を奮い立たせている気がしていたのだった。

「それじゃあ、わたしが何月何日に何処でどんな風に死ぬのかも、決まってるんですよね?」
「はい、そうですね。」
「それを教えていただく事は、出来ますか?」

わたしがそう訊くと、雨城さんはわたしが聞き逃さないように、ゆっくりと答えてくれた。

「8月28日、仕事帰りの帰宅途中に、髄膜炎で亡くなると報告を受けています。」

――――8月28日
――――帰宅途中に、髄膜炎で···

あまりにもリアルな回答に、つい納得してしまっている自分がいた。
何故か分からないのだが、それが想像出来てしまったのだ。

「じゃあ、その時に雨城さんが······」

わたしがそう呟き、宙を見上げると、雨城さんは静かに「はい。」とだけ返事をした。

「でも、どうやって?雨城さんは人間の姿をしているから···見られちゃったら、ヤバくないですか?」

わたしが眉間にシワを寄せながらそう訊くと、雨城さんは穏やかな口調で「それは心配いりませんよ。」と言った。

「僕は、普通の死神と違って、遠隔で任務を遂行する事が出来るんです。」
「へぇ、凄いですね!見られちゃヤバいですもんね。」
「見られたら、こちらの世界では逮捕されてしまいますからね。」

わたしはそれを聞き「確かに。」と笑ってしまった。

笑うような話でもないのだが、わたしの心はなぜか穏やかになっていた。

すると、雨城さんが「雫さん。」とわたしの名を呼んだ。
そこでわたしは雨城さんの方を向き、「はい。」と返事をする。

雨城さんは優しい瞳でわたしの事を見つめていた。

「何かやりたい事はありませんか?僕にお手伝い出来る事があれば、何でもやりますよ。」

雨城さんの言葉から「やりたい事······?」と呟くわたし。

やりたい事···――――
わたしがやりたい事って、何だろう···――――

そう思いながら、わたしは思い浮かんだ事を口にした。

「やっぱり仕事は、ギリギリまで精一杯頑張りたいですね。それから···、最期くらいは、誰かに愛されたいです。愛を感じてから、逝きたいですね。」

わたしはそう言うと、雨城さんに照れ笑いをして見せた。

わたしは今、きっと恥ずかしい事を言っている。
しかし、それがわたしの本音だ。

最期くらいは、誰かに愛されたい···――――

何もおかしくはないよね?
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