余命2ヵ月のわたしを愛した死神
「でも、あと2ヵ月しかないのに、新しい恋人を作るには時間が足りません。それに、仮に出来たとしても、余命短いわたしと恋をするのは、相手には残酷でしかありません。だから···、雨城さん―――」
わたしはそう言うと、雨城さんを見上げた。
雨城さんはこれからわたしが言おうとしている事を悟っているかのように、穏やかに「はい。」と返事をした。
「わたしの、恋人になってもらえませんか?わたしの命が尽きる、その日まで······」
自分でも、何を言っているんだろう、と呆れてしまうような願い。
でも、最期くらい我儘を言っても許されるような気がしてしまった。
雨城さんはわたしの願いに驚く事なく、「僕でいいんですか?」と言った。
「雨城さんにしか、お願い出来ません。期間限定の恋人です。わたしを心から愛して欲しいとは思っていません。ただ···フリをしてくれるだけでいいんです。」
わたしがそう言うと、雨城さんは一呼吸置いてから「分かりました。」と承諾をしてくれた。
こうして、雨城さんとの口約束の契約を結んだわけだが、期間限定の恋人は、何をするものなのだろう。
自分から無理な願いを言っておきながら、(そんな疑問を抱くなんて、本当に馬鹿だなぁ。)と自分にほとほと呆れてしまった。
すると、雨城さんは自分に呆れ返っているわたしに、こんな提案をし始めた。
「じゃあ、新しい家は必要ありませんね。最期の日まで、この家に居ればいいですよ。それから、僕たちは恋人関係になるわけですから、同じ部屋で、同じベッドで眠りましょう。」
あまりの雨城さんの呑み込みの早さと、大胆な提案に、自分が願った事にも関わらず戸惑ってしまう。
しかし、ここで否定してしまうと、雨城さんには失礼になってしまうと思い、わたしは「宜しくお願いします。」と何だか少し的外れな返答をしてしまった。
(今の返事じゃ、その先の何かを期待してるみたいじゃない?)
そう思いながらも、口に出してしまった言葉を撤回出来る筈もなく、わたしは少し照れ笑いを浮かべながら誤魔化したのだった。
「それじゃあ、もう夜も更けてきましたし、そろそろ寝ましょうか。」
雨城さんにそう言うと、わたしを雨城さんの寝室に案内してくれた。
雨城さんの寝室は、リビングにあるドアの先にあった。
8畳程ある広さの寝室には、正面の壁寄りの中央にダブルベッドが置いてあり、左側には街並みを眺められる窓が見えた。
あとはスタンドライトに、正面の壁には大樹の大きな絵画が飾られていた。
(寝室もお洒落だなぁ······)
そう思いながらわたしが寝室を見渡していると、「今日から雫さんの寝室でもありますよ。」と雨城さんは言った。
その言葉に少し照れてしまったわたしは、「そう、ですよね。」と間抜けな返答をしながら、つい中央のダブルベッドに目がいってしまうのだった。