余命2ヵ月のわたしを愛した死神

「僕が人間の肉体を与えられて、この人間界で暮らし始めたのは、35年前になります。なので、人間でいうと35歳になりますかね。」

雨城さんの何だか不思議な話に、わたしの胸がワクワクする。
それは、聞いた事のない昔話を聞いているような感覚に近かった。

「人間の肉体を与えられるまでになるには、高い霊格とかなりの信頼度が必要になります。信頼度は、どれだけ正確に死を迎える人間を死界へ導けるかで決まります。」
「死を迎える人間をどうやって死界へ導くんですか?」

わたしがふと疑問に思った事を口にすると、雨城さんは微かに嬉しそうな笑みを浮かべ「良い質問ですね。」と言った。

「まず、人間の決まった寿命の時間になると、死神は鎌を使い、肉体と魂を切り離します。そこで魂を死界へ送るわけですが、現世に未練がある魂は死界へ行くのを嫌がり、逃げてしまう事があるんです。」

雨城さんがそう言ったところで、わたしは「そういう人が浮遊霊になったりするって事ですか?」と訊くと、雨城さんは人差し指を立てて見せ「その通りです。」と言った。

「そこで魂を説得出来るかによって、信頼度も変わってきます。納得しなかった魂はそのまま現世に残り、納得した魂は光の道へと導き、死界へと送ります。」
「納得しない魂って、どんな魂なんですか?」
「そうですね···、例えば不慮の事故だったり、自死を選んだ魂が多いかもしれませんね。不慮の事故だと何の心の準備も出来ないまま、肉体と切離されてしまうので、自分が置かれた状況に混乱してしまうんです。自死の場合は、周りの声が聞こえなくなっている事がほとんどなので、いくら説得しようとしてもこちらの声が届かないんですよね。」

雨城さんの話から、視えない世界の複雑さを知り、わたしは少し胸が苦しくなった。
亡くなったら、みんな同じ方向に向かうものだと思っていたけれど、亡くなり方によっても違うのだと知り、わたしは勉強になる話だと思った。

「納得して光の道へ進めた魂は、三途の川を渡り、天へ上る事が出来ます。一度天へ上れた魂は、好きな時に現世へ下りて、大切な人たちに会いに行く事が出来るんです。」

雨城さんの口から出てくる話は、どんな話も興味深く、わたしの学びとなった。
わたしには、まだまだ知らない世界があるのだと思い知らされるのと同時に不思議な気持ちになり、自分がその立場になった時、わたしはどんな気持ちでどうなるのだろうと想像してしまうのだった。
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