余命2ヵ月のわたしを愛した死神
「三途の川って、本当にあるんですね。」
雨城さんの話からわたしがふと感じた事をそのままに言うと、雨城さんは「はい、ありますよ。」とストレートに答えた。
三途の川って、どんな感じなのだろう。
本当に川みたいな感じなのだろうか。
綺麗なのか、それとも薄暗く怖い雰囲気なのか···――――
わたしもいずれは通るであろうその川が気になり、わたしは「三途の川って、どんな感じなんですか?」と雨城さんに尋ねてみた。
すると雨城さんは"三途の川"を思い出すかのように宙を仰ぎ、「底が見えない綺麗な川が流れていて、そこに長い橋が架かっています。周りは草木が生えていて、所々に蛍に似た光が散りばめられている感じですね。」と答えてくれた。
それを聞き、わたしは何となくホッとする。
(怖い感じじゃなさそうで良かった。)
しかし、もし仮に怖い場所だったとしても、雨城さんが一緒に居てくれるなら、わたしは大丈夫な気がした。
わたしを死界へ導いてくれる死神が雨城さんで良かったと、そう思ったのだ。
「それじゃあ次は、雫さんの話を聞かせてもらえませんか?」
そう言う雨城さんの言葉から、次にわたしのターンに切り替わる。
わたしは、「わたしの事ですか···」と言いながら、何を話そうかと迷ったが、自分には特別話せるような話題がある訳でもない為、幼い頃の話をする事にした。
「わたしは、父に育てられました。母は物心つく頃には居なくて、父子家庭で育ったんです。父からは、お母さんは事故で亡くなったと聞いていたんですけど、でも···本当は違ったみたいで、本当は好きになった男の人の所へ行ったみたいです。夜遅くに父と祖母が話してるところを聞いて、その事を知りました。」
わたしがそう話すと、雨城さんは複雑ながらも悲しい顔は見せず、わたしの話に耳を傾けてくれていた。
「父は優しい人でした。だから、わたしにそう嘘をついていたんだと思います。母親が自分より男を選んだなんて知ったら、傷付くと思ったんでしょうね。」
わたしはそう話しながら、父の顔を思い出していた。
いつもにこやかで、怒鳴ったり怖い顔をした父の姿が思い浮かばない程、いつもわたしに優しい父だった。
「そんな父がいつも聴いていたのが、"最後の雨"だったんです。わたしは、いつも父の隣でその曲を聴いていました。"最後の雨"は、わたしにとっても大切な曲なんです。だから、雨城さんが"最後の雨"を弾いていた時、凄く嬉しかったんです。」
「そうだったんですね。」
わたしの言葉に穏やかな口調でそう言う雨城さんは、切ない眼差しでわたしを見つめていた。