余命2ヵ月のわたしを愛した死神

「雫さんがご存知か分かりませんが、お父様はトラックの車内に雫さんが幼い頃の写真を飾られていました。そして、最期の瞬間まで、雫さんの事を想っていました。」

雨城さんのその言葉を聞いた瞬間、視界がじんわりと滲んでいくのが分かった。
鼻の奥がツンとして、視界を滲ませる涙が零れ落ち、頬を伝っていく。

確かに祖母から聞いた事があった。
父がわたしの写真を持ち歩いていると···――――

わたしは父からの愛を感じてはいたが、それを聞き再確認出来たような気がした。
時には喧嘩もした。存在を鬱陶しく思う事もあった。
それでもわたしは父が大好きで、ちゃんと愛されていたのだ。

堪えきれず零れ落ちる涙と声を殺し、わたしは左手で口を抑えた。

そんなわたしに身体を寄せ、右腕でわたしを包み込んでくれる雨城さんは、「僕の胸で宜しければお貸ししますよ。」と言ってくれた。

その言葉に甘え、わたしは雨城さんの胸に額をつけると、涙を零し続けた。
雨城さんの胸は広く、腕の中は温かかった。
まさに雨城さんは、包容力そのものだった。

ずっと独りで抱え込んでいた独りの寂しさが、どっと溢れ出すかのように涙が止め処なく流れ落ちていく。

これはただの悲しい涙なんかじゃない。嬉し涙だ。
父の愛を知れた、喜びの温かい涙だ。

わたしは、それを教えてくれた雨城さんに心から感謝した。

そして、父が無事に成仏出来ている事を知った上で(わたしももう少しで、そっちに行くからね。)と心の中で父に呼び掛けた。

そうしている内にわたしは泣き疲れて眠ってしまっていた。
いつ眠ったのかは記憶に無いが、雨城さんに抱き締めてもらいながら、安堵の中での眠りだった。

こんなに安心して眠れたのは、いつぶりだろうか。

いつもであれば、怖い夢だったり、何かに追いかけられる夢だったり、責められるような夢をみるのだが、その日は何の夢もみる事はなかった。
ただ心地良く温かい、それだけだった···――――

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