余命2ヵ月のわたしを愛した死神

「分からない事があれば、訊いてね?俺で良ければ。」
「はい、ありがとうございます。」

篠原さんの優しさが温かい。
この人がチームリーダーで良かったと、そう思った。

そうして休憩時間も終わり、午後の業務に戻ろうと席を立った時。

コツコツとヒールを鳴らせながら歩く音が近付いて来たかと思うと、その音はわたしのすぐ傍で止まった。
わたしは何気なくそちらに目を向けたのだが、視界に入って来たその人物の姿を見た瞬間、その事を後悔する事となる。

「新人さんがこんなところでゆっくり休憩なんて取っちゃって、余裕なのね。」

嫌味たっぷりにそう声を掛けてきたのは、今日も大胆な服装でタイトなミニスカートを穿く畑山さんだった。

わたしは何と言い返したら良いのか分からず、とりあえず「お疲れ様です。」と言っておいた。

すると、そこへ「畑山さん。休憩時間をきっちり取るのも大事な仕事の一つですよ。何か問題でも?」と篠原さんが穏やかな口調で言い返してくれた。

わたしを鋭い瞳で直視していた畑山さんの視線は、素早く篠原さんへ移ると「あ〜ら、篠原さん。居たの?」と、これまた存在感を否定するような言葉が畑山さんの口が飛び出してきた。

「見えませんでした?僕、これでも175はあるんだけどなぁ。」
「存在感が無さ過ぎて、わたしの視界には入って来なかったわ。」
「そうでしたか。畑山さんの視界には、雨城課長しか入って来ませんもんね。雨城課長の視界には、畑山さんは入ってないと思いますけど。」

にこやかに穏やかな口調で言う篠原さんのどぎつい言葉に、畑山さんの顔は見る見る内に真っ赤になり、鬼の様な形相と豹変する。

(篠原さん、結構凄い事言うなぁ······)

わたしには恐ろし過ぎて言えないような言葉をズバズバと言ってしまう篠原さんに、わたしはある意味尊敬の念を抱いてしまう。

畑山さんは篠原さんを睨みつけた後、「ふんっ!」とそっぽを向き、またコツコツとヒールを鳴らせ、全身で怒りを表しながら去って行ってしまった。

「言い返さなかったって事は、本人も自覚あるんだね。」

畑山さんの後ろ姿を眺めながら、相変わらずな篠原さんの言葉に、わたしは苦笑いを浮かべる事しか出来なかった。
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